新型コロナウィルスが経済活動に広範な影響を及ぼす中で、国内の洋上風力発電ビジネスの動きは、とどまるどころか活発化しています。特に、一般海域における洋上風力発電は、事業者の公募手続きに向けた準備が進んでおり、いよいよ日本でも洋上風力の本格導入と競争が始まろうとしています。そこで今回は、洋上風力に関する最新の制度動向や注目すべきポイントを西村あさひ法律事務所の川本周弁護士に解説してもらいました。

(出所:Adobe Stock)
(出所:Adobe Stock)

【質問1】日本国内の洋上風力発電を取り巻く最近の動きを教えてください。

【回答1】国内の洋上風力発電の本格的な導入に向けて着実に進捗しています。2020年2月には、秋田港・能代港における洋上風力発電事業の実施が決まりました。国内初の商業ベースの大型洋上風力発電プロジェクトです。丸紅を筆頭に13社が参加します。
プロジェクトファイナンスによる資金調達の契約も締結。洋上風力発電の本格導入に向けての嚆矢となる重要な一歩です。

 秋田港・能代港は港湾エリア内での洋上風力案件ですが、一般海域でも着実に進展しています。一般海域における洋上風力発電についてのルールを定めた「再エネ海域利用法」(海洋再生可能エネルギー発電設備の整備に係る海域の利用の促進に関する法律)に基づき、促進区域の指定や事業者の公募に向けて準備が整いつつあるのです。

 再エネ海域利用法は、国土交通省と経済産業省が一般海域のうち洋上風力発電の導入準備が整った「促進区域」を指定。その地域において国が「公募占用指針」を作成します。その後、公募によって事業者を選定する流れを規定しています。

一般海域での促進地域第1号は長崎県五島市沖

 国交省と経産省は今年1月、初めての促進区域として長崎市五島市沖の海域を指定しました。4月に事業者を選定するための公募手続の指針案を示したことで、新たに始まる公募手続きの具体像が見えつつあります。

 長崎市五島市沖のほか、秋田県と千葉県の3つの海域が促進区域の指定に向けた「有望な区域」とされています。これらの各地域では、地元関係者も参加する協議会による調整が進み、促進区域として正式な指定を獲得するための手続きが進んでいます。

 現時点では「有望な区域」とされていない海域でも、「有望な区域」として選定を目指し、地元と一体となって準備が進められているようです。

 さらに、再エネ海域利用法が外国企業の参入を促す効果も発揮しています。以前から、日本企業が各地で国内洋上風力発電にトライしてきましたが、再エネ海域利用法によって一般海域の占用や利害関係者との調整を進めるための制度が整ったことで、参入のハードルが低くなりました。

 また、日本企業にとっても、再エネ海域利用法による公募手続きで、洋上風力発電設備の設置・維持管理・運用の実績が選定の評価要素となっているため、経験豊富な外国企業と連携したい事情があります。

この先は日経エネルギーNextの会員登録が必要です。日経クロステック登録会員もログインしてお読みいただけます。

日経エネルギーNext会員(無料)または日経クロステック登録会員(無料)は、日経エネルギーNextの記事をお読みいただけます。日経エネルギーNextに関するFAQはこちら