2023年度冬季のJEPX(日本卸電力取引所)スポット市場は過去3年ほどの冬相場とは大きく異なり、価格は安く安定し、おろそしいほどの穏やかさだった。その一方で、過去に見られた市場高騰を警戒して事前にベースロード(BL)市場で手当てしていた新電力は、結果的に高値づかみとなった。卸電力価格のリスクをヘッジする手段や手法を見直す必要がある。

 今冬のシステムプライスを見てみると、2023年12月の月間平均は12.4円/kWh、24年1月は10.12円/kWhだった。2月はさらに下がって9.36円/kWhと安価で推移した(グラフ1)。

今冬は安価で安定していた
今冬は安価で安定していた
グラフ1●2023年12月~2024年2月のスポット市場(出所:JEPXデータを基に著者作成)

 振り返って国際的な燃料価格の上昇の影響を受けた2022年1月の平均21.94円/kWh、2023年1月の19.56円/kWhと比べると、2024年1月はざっと半値である(グラフ2、3)。今冬の安さが際立っている。

2022年1月の月間平均21.94円/kWh
2022年1月の月間平均21.94円/kWh
グラフ2●2021年12月~2022年2月のスポット市場(出所:JEPXデータを基に著者作成)

2023年1月の月間平均は19.56円/kWh
2023年1月の月間平均は19.56円/kWh
グラフ3●2022年12月~2023年2月のスポット市場(出所:JEPXデータを基に著者作成)

 ところが、さらにさかのぼった2021年1月は、国内の燃料調達不足があらわになり月間平均でなんと63.07円/kWh。インバランス料金の上限である200円/kWhをつける時間帯が頻発した異常な相場だった(グラフ4)。あれから3年たつものの、あのときの恐怖が脳裏から離れない新電力関係者も少なくないだろう。

2021年1月は月間平均で63.07円/kWhと荒れ狂った
2021年1月は月間平均で63.07円/kWhと荒れ狂った
グラフ4●2020年12月~2021年2月のスポット市場(出所:JEPXデータを基に著者作成)

安値安定の裏で新たな悩み

 今冬は暖冬で国際燃料市場が落ち着いていたうえに、燃料不足や電源不足に備える政策も奏功したのだろう。総じて小売電気事業者にとっては平穏な冬だったと言えそうだ。しかし、個々の事業者に焦点を当てると新たな悩みに直面したケースもあったに違いない。

 過去3年の冬相場は上述したとおりである。とりわけ、社外から電力を調達しなければならない多くの新電力にとって、スポット市場の高騰リスクは骨身にしみていたことだろう。

 近年は市場価格連動型の販売契約も増えていると聞くが、ただ一方的に需要家にリスクを肩代わりしてもらうだけでは、今後も生き残れるとは限らない。やはり、小売電気事業者自身がどう市場リスクと向き合うかは、競争力を分ける大きな要素となってくるだろう。

 こうした視点から今回、改めてBL市場の問題点を取り上げてみたい。というのも、一部の新電力は卸電力価格のリスクヘッジをBL市場に求めていると見られるが、BL市場の活用が逆に市場リスクを抱え込む要因となった可能性があるためだ。

 BL市場は受け渡しの前年度の7月から翌1月にかけて4回に分けてオークションが実施される(2023年度オークションは8月~翌1月)。全国を東日本と西日本、北海道(2023年度オークションから九州に入れ替わる)の3つに分けたエリアごとに約定価格と約定量が決まる。

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