経済産業省の有識者会議で、6月に閣議決定された「規制改革実施計画」への対応が協議された。焦点だった大手電力の「発販分離」や、発電と小売りの収益を分別管理する「会計分離」については「事業者の自由な選択の問題」とし、政策には取り込まない方針だ。

(出所:123RF)
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 2023年12月26日、経済産業省は電力・ガス分野の上位審議会である電力・ガス基本政策小委員会(第68回)を開催し、6月に閣議決定した「規制改革実施計画」への対応について、改めて経済産業省が報告を行った。

 同計画の電力システムに関連する部分は、一般送配電事業者の顧客情報漏洩や大手電力小売部門によるカルテル問題などを踏まえ、規制改革担当大臣の下に置かれた内閣府「再生可能エネルギー等に関する規制等の総点検タスクフォース」(再エネTF)が行った提言に基づいている。

 規制改革実施計画が提示した中身は「情報漏洩などの不正事案を踏まえた電気事業法上の罰則強化」や「電力・ガス取引監視等委員会の機能強化」など多岐にわたる。中でも大きな焦点となっていたのが「電気事業者の組織の在り方の検討」だった。具体的には、次の2つを要請していた。

・旧一般電気事業者の送配電部門の所有権分離についての必要性や妥当性を検討する

・電気事業者の発電部門と小売部門の組織の在り方に関し、発販分離及び会計分離について、各事業者の事業戦略に基づき選択可能であるという前提の上で検討する

 いずれも大手電力の事業体としての構造の見直しを迫るものである。

 これに対して経産省はこの日の会合で、所有権分離については「不正事案への対応としての直接的な必要性、妥当性は認められない」との考えを改めて示した。これは、8月の基本政策小委(第64回)で不正事案対応を取りまとめた際に示した方針案からまったく変わっていない。

「必要性、妥当性は認められない」
「必要性、妥当性は認められない」
図1●送配電の所有権分離への対応(出所:経済産業省、黄色マーカーは著者)

大手電力の組織改革には手を付けず

 もう1つ、発電部門と販売部門を分社化する発販分離、あるいは分社化まではしないまでも両部門の収益を分けて管理する会計分離の検討については、「(新電力を含めた)電気事業者の判断として事業戦略上必要であれば自由に選択可能という整理」とし、経産省としては小売り活性化の観点から「内外無差別な卸売の促進に注力していくことが適切」と結論づけた(次ページの図2)。

 要は発販分離も発販の会計分離も規制として導入する必要はなく、これまで監視委員会が取り組んできた電力卸しの内外無差別化をそのまま推し進めることで足りるとしたのである。こちらも事実上の「ゼロ回答」だったと言っていい。

 結局、規制改革実施計画が検討を迫った送配電の所有権分離や発販分離といった大手電力の構造改革に、経産省は一歩も踏み込まなかった。

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