将来の電力市場改革などを議論する資源エネルギー庁の研究会「卸電力市場、需給調整市場及び系統運用の在り方勉強会」の場で、太陽光発電協会が卸電力市場において0.01円/kWh未満の価格付けを検討するよう提言した。現行ルールでは認められていないマイナス価格だが、市場を活性化し、再エネ関連の技術開発や投資を促進する効果が期待できる。

 このところの卸電力取引のスポット相場(JEPXスポット市場)の相場付きはこれまでとまったく違う。

 4月に入れば、例年なら電力価格が落ち着く端境期に入る。2021年冬期は燃料制約から電力価格は異例の高騰が起きたものの、それでも4月になると全国システム価格平均は6.69円/kWhと落ち着いた。

 しかし、この4月は24日渡しまでの全国システム価格平均が17.21円/kWhといった具合いである。この水準が前年より10.5円/kWh近く高い。ウクライナ侵攻による燃料価格の国際的高騰が背景にあると思えば、日本の電力価格の高さそのものはある程度想定できる。だが、それだけではない。ボラティリティ(価格変動)も極端に大きい。

 ボラティリティの高い相場は昨冬(2021年度)から続いている。とりわけ、夜間や雨天・曇天の時間帯の価格が高止まりする傾向が強い。その一方で、日照が期待できる時間帯は急に最低価格0.01円/kWhが出現する。良くも悪くも太陽光発電の影響が著しく大きく、高値から安値までの振れ幅が極端だ。

 グラフ1は、2021年4月から直近まで東京、および関西エリアのJEPXスポット価格の推移を示している。JEPXスポット価格では、市場における価格水準に0.01円/kWhといった下限がある。グラフ1における電力価格の水準を見ると、2021年4月も下限価格である0.01円/kWhが出現している。

 だが、昨年までこの時期の価格水準は相対的に低いものだった。2022年4月のように高い価格水準からいきなり0.01円/kWhに低下する激しい変動はこれまで見られなかったものだ。

2022年4月の価格変動(青線囲い)は2021年4月(赤線囲い)より格段に大きい
2022年4月の価格変動(青線囲い)は2021年4月(赤線囲い)より格段に大きい
グラフ1●東西エリア価格の推移(出所:著者作成)

価格水準が高く、価格変動は格段に大きく

 1日の価格のつき方を比べてみる。グラフ2は2021年ゴールデンウィークの5月4日(火)に出現した30分コマごとの約定価格推移とJEPXに持ち込まれた市場取引量(売買入札量、及び約定量)を示している。グラフ3は今年の4月10日(日)分である。

日中は0.01円/kWh、明け方・夜間は6~8円/kWh台
日中は0.01円/kWh、明け方・夜間は6~8円/kWh台
グラフ2●2021年5月4日(火)の1日の価格推移

日中は0.01円/kWh、明け方・夜間は16~23円/kWh
日中は0.01円/kWh、明け方・夜間は16~23円/kWh
グラフ3●2022年4月10日(日)の1日の価格推移

 いずれの日も日中価格が0.01円/kWhに張り付いている一方、夜間や明け方時間帯が相対的に高い。ただ、2021年5月4日の水準が6~8円/kWh台であるのに対し、2022年4月10日は16~23円/kWhと価格水準は昨年の2~3倍といったところだ。

 この時期、1日の価格変動は激しくなりがちだが、今年はより変動幅が大きくなっている。一見、好ましくない事態に見えるが果たしてそうだろうか。

 昨夏の8月に「電力市場に『マイナス価格』」のススメ」を本コラムで提唱した。

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