2021年秋から電力市場は異例の高値が依然続いている。電力・ガス取引監視等委員会は中央値で80円/kWhという新電力の高値買い入札を問題視し始めている。しかし、本当の問題は別にあるのではないか。市場への玉出し役であるはずの大手電力の中で、市場から正味買い越しになっている事業者がなぜか増えている。
2022年に入っても日本卸電力取引所(JEPX)スポット価格は高値が続いている。
2021年11月と12月、本コラムで旧一般電気事業者とJERAの売買入札量について取り上げ(「大手電力の度重なる買い越しが意味するもの」「JERAが投じた改革の一石、電力市場を襲った“高波”」参照)、その動向がスポット価格に影響している可能性を指摘した。
今回も2022年1月の実績から(1月31日までの電力・ガス取引監視等委員会が旧一電ごとの入札状況を開示した「監視対象日」が対象)、引き続き市場で何が起きているのかを見ていく。
グラフ1は日本卸電力取引所(JEPX)に旧一電が札入れした売り入札量の推移を示した。
先の監視が昨夏に始まって以来、関西電力(赤線)とJERA(灰色線)が、売り札を投入している主要先だ。従来から売り札の供給先であった東京電力は、11月から市場投入機能をJERAに移転している。そこで、その頃からJERAが代わって売り入札を行っている。そのため、それ以降は、一貫してJERAと関西電力が、JEPXのスポット市場に玉出しを行っていることになる。
1月は旧一電の買い越しが顕著に
グラフ2は各社の買い約定量の推移を示している。旧一電は売買両建ての入札(グロスビディング、GB)が許されている。また、隣接する他エリアでの売買も行われる(間接オークション)。グラフ2の買い約定量は、いずれのケースの買い入札量も算入したものだ。本グラフを作成するにあたっては、各社が実際に買い約定した量に焦点を当てた。
このグラフを見ると関電は積極的に買い戻していることが分かる。しかも、12月から買い約定量は徐々に増加している。
グラフ3は、グラフ1とグラフ2の各社の数値を用いて、実質的な買い越しを時系列に示した。売り入札したものの買い戻された結果、売り入札として真に意味のある「ネット売入札量」を把握するのが目的だ。グラフのピンク色の背景に示される領域は、実質的な買い越しを意味する。JERAがスポット市場への売り玉供給者であることに変化はない。
一方で、ピンク色の領域で買い越し幅が大きい、または拡大したように見える4社のみ抽出してみた。
ここ最近の4社の動きは以下のように要約できる。
- 東北電力(紫線):12月上旬より買い越しとなり、12月下旬から買い越し幅は高水準を維持。
- 中部電力ミライズ(黒線):12月上旬より買い越し幅は減少に転じていたが、新年明けて1月中旬より漸増。
- 関西電力(赤線):12月上旬より買い越しとなり、漸増。特に、新年明けより高水準。
- 中国電力(茶線):コンスタントに買い越し継続。
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