JERAが東京電力エナジーパートナーとの電力購入契約を見直し、並行してJEPXスポット市場への入札価格(限界費用)の改定を表明した。秋口から続く電力市場高騰の引き金になった可能性がある。
国内最大の発電事業者であるJERA(東京都中央区)が、良くも悪くも足元で日本の電力市場を揺さぶっている。
既に日経エネルギーNextでも取り上げているが(「東北電やJERA、JEPXスポット市場への売り入札価格を変更」、「JERA幹部が明かす、冬の電力不足を防ぐ『PPA』『限界費用』見直しの意義」)、改めてJERAの取り組みを整理しておく。要点は3つだ。
(1)東京電力エナジーパートナー(東電EP)とのPPA(電力購入契約)で採用している「変動数量契約」の中身を見直す。具体的には、ゲートクローズ(実需給の1時間前)直前まで東電EPはJERAから調達する電力量を変更できるという契約だったが、通告期限を前日スポット市場前とする
(2)JEPX(日本卸電力取引所)のスポット市場において、これまで東電EPが担ってきた東京エリアにおける余剰電力の玉出し作業を11月からJERAに移管する(中部エリアはかねてJERAが玉出しを実施)
(3)以上の取り組みに合わせてJERAは、システム対応などの理由から、東電EPが行っていたグロスビディングについては電力・ガス取引監視等委員会とも協議のうえ11月から停止する
市場の透明性は一歩前進だが・・・
これらはJERAによる燃料調達の見通しを改善し、JEPXの価格形成に関する透明性や流動性を高めることにつながると、監視委員会が10月1日に開催した制度設計専門会合の場などでJERAは説明している(説明資料)。
電力市場も全面自由化から5年が経つ。競争の公正をうたっておきながらこの間、このような大手電力の発電・小売り間のPPAや市場投入主体の問題が手つかずであったことは信じ難いことだ。しかし、遅すぎたとは言えJERAの英断により一歩前進したこと自体は評価したい。
その一方で、ここでは端境期のはずの今秋から価格高騰が続く電力市場とJERAの取り組みとの関連に注目している。
以下に登場するグラフは前回のコラム「大手電力の度重なる買い越しが意味するもの」で取り上げたものにその後の推移を付け加えた。JERAを含む大手電力がJEPX市場に供出した売り入札量について、監視委員会が公表したデータを基に作成したものである。
前回記事のグラフは11月13日までであったが、今回はそれ以降の監視対象日となった受け渡し日データを追加した。その結果、11月以降の大手電力の市場参加状況や展開をより鮮明に見て取ることができる。
グラフ1は、各社がJEPX市場に対する売り入札量の推移を描いた。監視委員会が提示している資料の中で、各社の「売り入札総量」から「グロスビディング(GB)高値買い入札量」と間接オークションなどの売り入札量を差し引いたものだ。11月に入って東電EPの売り入札量(緑)が激減する一方で、JERAの売り入札量(灰色)が取って代わるように増えているのがわかる。
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