2022年4月に再生可能エネルギーの支援策としてFIP(フィード・イン・プレミアム)制度が始まる。太陽光発電事業者を効果的にバランシンググループ(BG)に組み込み、発電の過不足を市場を使って調整することが期待される。新制度は再エネ拡大に必要なステップだが、市場の価格形成機能には課題が残されていることに留意すべきだ。

(出所:123RF)
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 FIP制度は、これまで買取価格が固定されてきた再生可能エネルギーを電力市場に取り込む「市場統合」が目的だ。資源エネルギー庁は8月、FIP制度の解説サイトを立ち上げた。

 2012年7月に始まったFIT(固定価格買取制度)は、もともと10年間の暫定措置とされてきた。その意味では、2022年に新制度が始まるのは予定通りだ。

 この間、とりわけ太陽光発電は急速に拡大した。一方で国民負担も増した。

 FITは再エネビジネスを始動させる仕組みとして始まった。次のステップがFIPであり、市場統合というわけだ。

海外ではマイナス価格は常識

 市場統合はFIPを通じて再エネビジネスで生まれた電力の値段を社会的に適正な水準へリンクさせようとする試みである。

 欧州では電源の新陳代謝を引き起こすべく、FIT、そしてFIPを通じて積極的な脱炭素促進策を段階的に進めている。その際に、再エネ由来の電力の価格を、需要と供給に基づく適正な水準で日常的に運営する仕組み作りを目指している。

 果たして、日本の電力および環境行政は同様のビジョンを描けているのか。市場統合を通じてカーボンゼロへの道筋を託すことになる卸電力市場、および先物・先渡市場は、その将来ビジョンに耐えうる機能を具備しているのだろうか。残念ながら答えは「No」である。

 その典型的な事例が卸電力市場にマイナス価格を認めていない運営だ。

 FIP制度が有効に機能するには、スポット市場におけるマイナス価格の導入が必要だと考える。現行ルールでは人為的な最低価格(0.01円/kWh)が設定されている。一方、FIPを運営している欧米の電力市場ではマイナス価格が成立している。

 発電してもお金を受け取れず、逆に支払う。むやみに発電し続けるだけの太陽光発電事業者には、受け入れにくい仕組みかもしれないが、海外では常識だ。

 国内の最低価格制度は、系統の空き容量や既存の発電設備の運営に無理をさせない配慮から導入されている。だが、一見正当と見える裏で、最低価格制度は既存ビジネスや特定ビジネスの保護政策になる。

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