2020年12月から2021年1月にかけての市場高騰をきっかけに、現行の市場制度を見直す機運が高まっている。市場に潜む問題は複合的だが、今一度、根本から洗い出していく必要がありそうだ。今回は「情報開示」のあり方を考える。海外電力市場の情報開示は圧倒的に進んでいる。
今回の市場高騰をきっかけに大きく見直すべきものの1つが、「情報開示」のあり方だと感じている市場関係者は少なくないだろう。
2016年4月に始まった発電情報公開システム(HJKS)では、発電事業者は認可出力10万kW以上のユニットに関する情報の登録が義務付けられた。それ以前は、各エリアの電力会社のホームページや新聞などのメディアから情報を収集し、推測するしかなかった。その意味ではHJKSが始まった意義は大きかった。
しかし、情報の幅やタイムリーさ、時間的粒度、クオリティーなどで課題はまだ多い。今回の高騰に関連するところでは、発電量(kWh)情報が公開対象になっていない。
現在、HJKSは認可出力の積み上げである電源残高について、2か月後までの分がkWの積算値としてグラフを公表している。同じ考え方で停止電源情報も公開されている。
海外はここまで情報開示が進んでいる
だが、これだけでは稼働可能な電源があることは分かっても、実際に出てくる電力量(kWh)は分からない。
2020年10月からはそれまでの停止電源だけでなく、「出力低下」情報が追加されるようになったものの、kWhベースの増減が分からなければ市場へのインパクトを推し量るのは困難だ。
また、現在のHJKSでは、事故で「計画外停止」となった電源が事故の修復に目途が立った時点で「計画停止」に切り替わったり、計画停止がいつの間にか延長されていたりといった運用が許されている。出力低下情報も実際にどのような運用がなされるのかは読み取りにくい。
本当に知りたいのは足元の実際の出力状況だ。しかも、遅くとも30分前といったタイムリーな出力情報がエリアごとに集約されることが望まれるところだ。
海外ではkWh情報が1つのシステムで集約され、電源種別に逐次アップデートされている。タイムリーな情報が電気の過不足情報として、市場参加者が次の展開を考える際の重要な判断材料になっている。
図2はEUが欧州各国の系統運用者(TSO)に向けて定めている情報開示ルールやガイドラインだ。
インバランス料金や系統総需要をコマごとに30分~1時間後以内に素早く公表する。系統総需要は実績だけでなく、翌日の予測を前日スポット市場の2時間前まで発表することなどを求めている。
上記のようなEUのルールやガイドラインに基づいて、欧州各国の系統運用者が実際に開示している情報が図3だ。いずれの国もインバランス料金やインバランス量を速やかに公開している。
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