今年も大雨をもたらす線状降水帯が発生しています。6月2日に高知・和歌山・奈良・三重・愛知・静岡の6県で線状降水帯が相次いで発生しました。7月10日に「大雨特別警報」が発表された福岡県と大分県では、線状降水帯による集中豪雨が発生し、土砂災害や河川の氾濫で尊い命が奪われました。ひとたび発生すれば、甚大な被害が出るおそれのある「線状降水帯」のメカニズムはどこまで解明されているのでしょうか。線状降水帯という言葉の名付け親でもある、気象庁気象研究所 台風・災害気象研究部の加藤輝之部長に聞きました。
――あらためて、線状降水帯がどういった現象なのか教えてください。
加藤部長 気象庁は線状降水帯を「次々と発生する発達した雨雲(積乱雲)が列をなした、組織化した積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50〜300km程度、幅20〜50km程度の強い降水をともなう雨域」と定義しています(気象庁「予報が難しい現象について」)。
線状の降雨域が同じ場所にとどまって強い雨をもたらし、3時間降水量が200ミリを超えるような集中豪雨を引き起こします。1時間程度の大雨なら問題なくても、長時間降り続くことで地面が保水しきれず、山が崩れる、河川が氾濫するなど、災害のリスクを高める大きな要因になります。日本で発生する集中豪雨事例の半数から3分の2が線状降水帯によって引き起こされていることが分かっています。
――線状降水帯が発生しやすい時季や地域はありますか。
加藤部長 線状降水帯は内陸部や瀬戸内海周辺の一部を除けば、日本全国で発生しています。発生が増えるのは、梅雨後期の7月です。梅雨後期に近づくと太平洋高気圧の周辺を回って、東シナ海から暖かく湿った空気が流入しやすい気圧配置になります。このため下層に暖湿気が流れ込みやすい九州と西日本の太平洋側で、線状降水帯による集中豪雨が多発するのです。
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