電力の安定供給のキーワードである「予備率」と監視体制について電力広域的運営推進機関に聞く本連載。第1回「予備率の意味と燃料監視の現在地、広域機関に聞く」では、kW面・kWh面それぞれの需給ひっ迫要因と、kWh面の監視の取り組みを聞いた。
 第2回のテーマは、夏冬のピーク需要を賄う発電所が足りているかを検証する「需給見通し」だ。太陽光などの再生可能エネルギーをどう供給力として評価しているのか。2022年冬の予備率がマイナスから急回復した理由とは。電力広域的運営推進機関(以下、広域機関)の小林正孝・運用部担当部長、岡田怜・企画部マネージャー、高間康弘・計画部マネージャーに話を聞いた。

(出所:123RF)
(出所:123RF)

[連載]広域機関インタビュー
第1回:予備率の意味と燃料監視の現在地、広域機関に聞く
第2回:電力需給見通しとは、予備率3%は「経験的な需要のぶれ」(今回)
第3回: でんき予報100%超の理由とは、電力需給ひっ迫警報・広域予備率解剖

kW監視の三段階、供給計画・需給見通し・広域予備率

――前回はkWh面である燃料の監視体制について聞きました。今回は発電設備の量を監視するkW面について教えてください。発電所を建てるには時間がかかるため、かなり前からチェックしておかないと対策が取れません。どのように監視しているのですか。

広域機関 ご指摘の通り、発電所の建設には時間がかかるので、10年後という長期から実需給日当日まで、検証期間が異なる「供給計画」「需給見通し」「広域予備率」の3つの取り組みによって不足がないかを確認しています(図1)。

 まず、実需給日の翌年度から10年後までの各年度の需給見通しを「供給計画」 で把握・評価しています。これは全電気事業者が毎年3月に広域機関に提出する電力供給の計画を取りまとめたものです。中長期の発電設備量不足や電力品質を保てるのかをチェックすることで、発電能力の確保、電力系統などの整備を検討するための基礎資料になっています。

 供給計画よりも実需給日に近い2〜4カ月後については 「電力需給検証報告書」 で予備率を検証し、春と秋の年2回公表しています。毎年5月頃に公表する報告書では夏の高需要期である7〜9月について、10月頃に公表する分では冬の高需要期である12〜3月について検証しています。

実需給日への時間幅により監視の取り組みは異なる
実需給日への時間幅により監視の取り組みは異なる
図1●広域機関による電力需給監視の全体イメージ(出所:広域機関への取材を基に筆者作成)

 2022年の夏・冬の節電要請はこの需給見通しの結果を基に出されたものです。電力需給検証報告書は「需給検証」や「電力需給見通し」と呼ばれたりすることが多いため、そちらを耳にしたことがあるかもしれません(編集部注・本稿では以後「需給見通し」で統一)。

 数カ月単位よりさらに実需給日に近い、2週間以内から実需給日当日までについては 「広域予備率」という指標を 「広域予備率Web公表システム」 で公開し、追加的な対策の必要性などを確認しています。

 この3つの取り組みの他に、広域予備率を補完する仕組みとして 「kWモニタリング」 を実施しています。

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