太陽光発電などの発電量が変動する「変動性再生可能エネルギー」(VRE)導入で日本のトップを走る九州。増加し続けているこれらの電源を活用するために、一般送配電事業者はどんな工夫を重ねているのか。VRE時代の幕開けを現場で支える、九州電力送配電・運用計画グループの平島晋一課長に聞いた。

——九州は再エネの先進地と言われています。まずは導入量から教えてください。再エネだけで供給がまかなわれている季節・時間帯もあるのですか。

平島氏 九州エリアは、太陽光発電の導入量がとても多いのが特徴です。固定価格買取制度(FIT)が始まった2012年末までの累積導入量は111万kWでしたが、2022年4月末には1100万kWと、10年で約10倍に増加しています。

 九州に太陽光発電が多いのは日照条件が良いためです。九州の人口・電力需要は、ともに日本の10%程度ですが、太陽光の導入量は17%にもなります。発電電力量に占める太陽光・風力の割合は12.2%(2021年度)です。

 季節・時間帯ごとの電力需要に占めるVREの割合については、火力発電などのベース電源の状況によるため一概に何%とお答えするのは難しいです。

 ですが、例えば2022年の最小需要日と想定される5月4日の12時には、718万kWの需要に対し太陽光の供給力が867万kW(出力制御前)となり、既に需要を超える供給力となっています(図1の青線参照)。

九州・中国・四国は太陽光の供給力が需要を上回ることもある
九州・中国・四国は太陽光の供給力が需要を上回ることもある
図1●2022年最小需要日(5月4日)の12時または13時のエリア需給バランス(出所:資源エネルギー庁、青線は著者が追加)

優先給電ルールに従い出力を抑制

——太陽光・風力の出力が需要を上回ることもあるということですが、これらを活用しながら需要と供給を均衡させるために、どのような運用をされているのですか。

平島氏 電力需要に対して供給が上回った際には、国の審議会が定めた「優先給電ルール」に従って、各電源の出力を抑制しています(図2)。

 まずは、九州エリア内の火力発電所の出力を最大限抑制します。それと同時に、揚水発電所のくみ上げによって需要を作り出すことや、蓄電池への充電も行います。それでも余剰が出る場合には、九州と本州を結ぶ関門連系線を利用して、他エリアに送電します。

 まだ余剰があるケースでは、バイオマス、次に太陽光・風力という順で出力制御を行います。以上のように、優先順位を付けることで太陽光・風力発電を最大限活用できるような仕組みになっています。

編集部注:揚水発電は蓄電池のような役割を果たす水力発電の一種。標高の異なる上池と下池が水路で接続されたもので、水路にはポンプと発電機が設置されている。電力が余っている時には余剰電力を使って下池から上池に水をくみ上げて電力需要を作り出すことができる。その水を上池から下池に流下させることで、必要な時間に発電ができるため蓄電池同様の役割を果たす。

太陽光・風力は原子力・地熱などに次ぐ優先度にある
太陽光・風力は原子力・地熱などに次ぐ優先度にある
図2●出力抑制や揚水での需要創出などで太陽光を活用 (出所:九州電力送配電)

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