ソーシャルビジネスを手がけるボーダレス・ジャパン(福岡市)が電力小売りに参入した。創業から13年で世界12カ国で35の社会事業を立ち上げ、2019年度の売上高は54億円。外部からの資金に頼らず、収益の出ている事業が他事業を支える仕組みなど、独特の企業経営手法にも注目が集まっている。そのボーダレスが4月16日にスタートした「ハチドリ電力」とは、どんなサービスなのか。田口一成社長に聞いた。

電気を「何かするための手段」にしたい語るボーダレス・ジャパンの田口一成社長
電気を「何かするための手段」にしたい語るボーダレス・ジャパンの田口一成社長
新型コロナウイルス感染防止のため、インタビューはWeb会議で行った

--なぜ電力小売りに参入したのですか。

田口氏 2つの目的があります。1つは、日本に再エネを増やすこと。地球温暖化は現代を生きる僕らにとってイシュー(問題)だと思っていました。日本のCO2排出量の41%が電力由来です。発電事業はCO2の増加のインパクトが大きい。そして家庭からのCO2排出量の48%が電気によるものです。

 世界が火力発電をなくそうとしている中、菅義偉官房長官が「日本は新設を続ける」と話しているのを聞いた時に、再エネ電気を販売しようと決めました。この状態を放置するのは良くない。自分がやれることをやらないといけないと思ったのです。

 ハチドリ電力では、非化石証書(再エネ)を使い、排出係数をゼロにしたCO2フリー電力を販売します。4月16日に受け付けを開始し、8月から電力供給を始める予定です。

社会的な事業にお金が流れる仕組みを作る

 もう1つ目的が、社会的な事業をやっている人たちに、電気を通じてお金が流れる仕組みを作ることです。NGOやNPOにお金が流れていかないという日本の課題があります。一方で、電気を切り替えた家庭は、まだ20%を超えたくらい。社会的な活動への意識が高い人の中にも、電気を切り替えていない人がたくさんいます。

 これはある意味、チャンスだと思いました。電気に対して無関心というよりも、電気が空気のような存在なので、切り替えに至っていない人がたくさんいます。ならば、電気を「何かするための手段」にしようと考えました。

 NPOやNGOの活動に共感しても、毎月は寄付できない人が大半です。そこで、ハチドリ電力は、電気料金の1%を毎月、支援する団体に寄付する仕組みにしました。お金が流れていく新しい仕組みを作ることが、社会作りになります。そして、電気はCO2フリーになる。

――ハチドリ電力は、ボーダレス・ジャパンと同じく福岡市に本社を置く自然電力の取次という形で電力を販売するのですね。なぜ、この形にしたのですか。

田口氏 地球温暖化は喫緊の課題ですから、とにかく早くやりたかったんです。再エネ電気を販売しようと思ったのは、2019年12月。そこから4カ月でサービス開始にこぎ着けました。

 短期間で事業化するにはパートナーが必要だと考えました。「代理」ではなく、「取次」の形態を取ったのは、自ら料金プランが作れるからです。

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