東京ガスは2019年11月に長期ビジョン「Compass2030」を公表。そして3月25日には2022年までの3カ年の中期経営計画を発表した。足元の競争が厳しさを増す中、長期ビジョでは2050年CO2ネット・ゼロを国内エネルギー会社として初めて打ち出した。長らく企画畑を歩んできた笹山晋一常務に、ビジョンの背景を改めて聞いた。

長期ビジョン「Compass2030」について語る、東京ガスの笹山晋一常務
長期ビジョン「Compass2030」について語る、東京ガスの笹山晋一常務

--長期ビジョンの話の前に、新型コロナウイルスの事業への影響について聞かせください。

笹山氏 はっきりしたことは言えませんが、業績への影響が一定程度あるのは間違いありません。法人需要家の事業活動の縮小によって、ガスや電力の需要は減少するでしょう。

 また、LNG(液化天然ガス)のスポット価格が下落していますので、その影響も出てくると思います。ただ、スポット価格の猛烈な下落は「誰もスポットで買っていない」ということでもあります。日本勢はLNGが余り気味。一部インド勢がスポット市場で調達しているという話もありますが、需給が緩和した状況は当面続くと思いますので、それを念頭に事業運営をしていかなければいけません。

 2020年4月1日付で新たに「需給本部」という組織を作ったのも、こうした状況にしっかり対応していくためです。ガス事業と電気事業、海外事業を一元的に見ることを目的としています。

--2030年までの長期ビジョン「Compass2030」について聞かせください。現在の1200億円の利益水準を2030年に2000億円にするとあります。内訳を見ると、ガスと電気のエネルギー事業は約750億円を1000億円に、ソリューション事業と海外事業を計500億円から一気に1000億円にするとあります。国内エネルギー事業は厳しいという見立てなのですね。

笹山氏 このビジョンは2050年を見据えたうえで、そこに到達するために、数字も含めて、この10年で実現しなければいけないこと、取り組み始めなければいけないことを盛り込みました。10年先を見据えた時に、足元の競争のことを念頭にビジョンを作るのはおかしい。

 環境認識という意味では、いわゆる4つのDの「脱炭素」「デジタル化」「分散化」「自由化(規制緩和)」が進展していますが、10年後は今以上にデジタルや環境問題がクローズアップされていると思います。ですから、今回のビジョンに電気とガスの競争のことは、ほとんど書いていないんです。

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