新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済を揺さぶっている。企業活動が縮小し、消費が冷え込んだことで電力需要は減少。LNG(液化天然ガス)は世界でだぶつき暴落している。さらに東京電力と中部電力が折半出資したJERA(東京都中央区)常務執行役員・経営企画本部長の奥田久栄氏は「感染が連鎖すれば、最悪の場合、停電を引き起こすおそれがある」と危機感をあらわにする。電力会社が抱えるリスクとは。奥田氏に聞いた。

(記事の内容はインタビューを行った3月6日時点の情報に基づいています)

JERAは中央制御室の運転員を感染から守るべく対策を講じている
JERAは中央制御室の運転員を感染から守るべく対策を講じている
川崎火力発電所の中央制御室(出所:JERA)

――新型コロナウイルスの感染拡大によって、電力インフラが脅かされることはあるのでしょうか。

奥田氏 大ありです。発電所の運転員が新型コロナウイルスに感染したら、しゃれにならない状況に陥る可能性をはらんでいます。

 現在の政府方針では、感染者に濃厚接触した人は働くことができなくなります。新型コロナの感染はもちろん大きなリスクですが、濃厚接触者全員が働けなくなることが、企業経営上、最も大きなリスクではないでしょうか。

 JERAは日本の火力発電所の半分を所有しています。運転員が感染した場合、その運転員はもちろん、運転員が所属する班のメンバー全員が自宅待機となります。これが連鎖すれば、最悪の場合、停電を引き起こしてしまいます。

 ですから、新型コロナウイルスの発生が確認された直後から、運転員をどう守るのか、運転員やその家族に感染者が出たとしても、発電所の運転に支障が出ないよう体制を整えています。

――具体的には、どのような対策を取っているのですか。

奥田氏 まず、発電所の中央制御室はクリーン化しています。運転員は出勤時に体温を測るなど、体調のチェックをしなければ中央制御室には入室できません。運転員は、通勤時に公共交通機関を使わず、自家用車で通勤するよう指示しています。

 また、運転員以外は一切、中央制御室に入ることができないようにしています。例えば、東京電力グループと中部電力の本店や支社の従業員が発電所を訪れても、中央制御室には入れません。

 中央制御室は何としても守らねばなりません。ウイルスが入り込まないよう、万全の体制を整えています。

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