米Apple社でさえ業績不振に陥る。斬新な新製品を市場に投入し続けている同社は、2016年1~3月期に13年ぶりの減収となった。「Mac」や「iPhone」の販売台数が2014年半ば以降、減少を続けていることが主な原因である。「Apple Watch」の立ち上がりも遅いため、同社は事業の柱として堅調な「コンテンツ・サービス事業」の拡大を模索している。

 新製品や新事業を継続して立ち上げて軌道に乗せていく経営の難しさは、どの企業にとっても同じである。為替変動や株価、競合関係などの外部要因を業績不振の原因にしたくなるのは理解できるが、ものづくりマネジメントがうまくいっていないことの言い訳にはならない。グローバル競争の本質は、ものづくりマネジメントの国際競争なのである。

1.日本のものづくりマネジメントは大丈夫か

 現在の日本のものづくりは、低迷のため国際社会の信頼を損なう限界点に達しつつあるのではないかと懸念される。この数年間、そう思わせることが続出している。シャープの中核事業である液晶事業の不振による台湾鴻海(ホンハイ)精密工業への身売り、東芝の不正会計処理を招いた業績不振、三菱重工業グループ(三菱造船・三菱航空機・三菱自動車)の業績不振、タカタ製エアバックのリコール拡大によるタカタおよび自動車各社の業績不振などが目立つところである。

 これらの根本原因は、その発生個所と経緯は異なるが、メーカーの屋台骨というべきものづくりマネジメントが的確でないことに他ならない。品質を支えるものづくりの技術コントロールが揺らいでいる状況下では、技術を統括するマネジメントに打開策を求めることこそ有力な解決策であると思う。

 円高、株安などにより経営環境が大きく変動する中、誰が悪いのかと犯人捜しをしている余裕など日本の製造業にはない。経営者層や管理者も、新商品・新事業開発のプロジェクトリーダーも外部委託先も、国の認証・検証機関も、“それなりに”力を尽くしていると思いたい。しかし、それが機能していないと思われる今日、急ぐべきことはものづくりマネジメントの意識改革ではないだろうか。