連載主旨

 ものづくり企業の経営の推進力は、未来を創る力すなわち「ものづくり戦略」である。

 ものづくり戦略は、研究開発部門や商品開発部門だけが決めるものではない。生産、製造、IT部門との連携が必要であるし、ものづくりの上流においては、マーケティング部門や営業部門も積極的に関わるべき時代である。部門の違いを乗り越えてものづくり戦略をリードできる“ものづくりイノベーター”こそ、今最も必要とされている人材像の1つと言えよう。

 『日経ものづくり』誌の調査(2015年1月号「日本のものづくりの強さ」)によれば、日本のものづくりを強化するには、「基礎研究」「生産技術」といった技術面の強化だけでなく、「失敗を恐れ、挑戦を避ける企業体質」「短期的な収益を重視した経営」「決められない経営」「縦割り組織」といった、経営や企業文化(いわゆるマネジメント)に課題があると、多くの回答者が考えているという結果が出ていた。

Q.日本の強みを阻害する要因は具体的に何だと思うか
上位5位までの回答。いずれも経営や企業体質の問題だった。
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 昨2014年、日経テクノロジーオンラインに掲載された筆者のインタビュー記事「今足りないのはイノベーションを継続的に起こす力」や「アクリフーズに見るマネジメントの欠陥」にあるように、ものづくりを継続的に成功させるには、「イノベーションを継続的に起こす力」が必要である。その中心的な役割を担うのが、“ものづくりイノベーター”だ。

 この連載では、“ものづくりイノベーター”に必要な、考え方と実践のヒントを提供していきたい。

森岡 謙仁(もりおか・けんじ)
経営・ものづくり・ITアドバイザー/アーステミア代表取締役

精密機械メーカー品質管理部門、独立系コンピューターディーラー取締役・開発部門の責任者などを経て、1992年より現職。品質管理、資材購買管理、技術人材スキルマップ、製品開発、製品ライフサイクル管理、R&D予算管理、生産管理システム、品質マネジメントシステム、サプライチェーン管理、新事業開発に携わる。経営管理手法と情報システム技術を一体とした経営革新、開発・生産組織改善、内部統制システムの改善、マーケティングと製品開発連携、製造部門や技術部門の業務改革プロジェクトおよびプログラム・マネジメントなど、上場企業から中堅企業を対象とした助言指導や教育で多くの実績を有する。

ドラッカー「マネジメント」研究会(ドラッカー学会)でファシリテーターを務めるほか、「ものづくりイノベーター養成講座」「事例で学ぶ『コトづくり』の進め方と『コト売り』成功の勘どころ」(日経ものづくり主催)、「CIO(最高経営情報責任者)養成講座」(日経BP社)などの講師を担当。
主な著書に、「ドラッカーの実践!! MOT(技術経営)リーダーのマネジメントスキルアップとテンプレート集」監修共著(新技術開発センター)、「教えてドラッカー 働く私はITでどこまで伸びるの?」(日経BP社)、「図解 ドラッカー入門」(KADOKAWA/中経出版)、など多数。