選手村を利用できない選手の存在
リオ五輪の選手村は、メーンのオリンピック公園から車で10分ほどの距離に位置する。移動を考えても立地は良い。17階建てのマンション形式の建物が31棟と、選手村の中には24時間食事をとることができる食堂やトレーニング設備が完備されている。
選手村とは別に、日本スポーツ振興センター(JSC)が日本選手団用に用意したのが「ハイパフォーマンスサポート・センター」だ。以前は「マルチサポートハウス」という名前で、ロンドン五輪などでも選手の活躍を後押しした。ここには、和食が食べられる食堂や炭酸泉入浴設備、サウナ、トレーニング施設が完備されている。
ここまではメディアの報道でご覧になった方も多いかと思うが、オリンピックでは選手村に入ることのできる選手・スタッフの人数が限られているため、すべての選手が上述の施設を利用できるわけではない。
例えば、「トレーニングパートナー」と呼ばれる試合直前まで練習の相手を務める選手や、「バックアップメンバー」と呼ばれる代表選手がケガをした場合などの入替え用のサブメンバーが現地に同行しているチームがあるが、その選手らは選手村を利用することができない。バックアップメンバーこそ、コンディションを整え、いつでも臨戦体制にしておく必要があるので、本来は入れるべきと個人的には強く思うが、現実は難しいようだ。
心強い有志のサポートチーム
こうした事情もあり、独自のサポート施設が会場周辺には存在する。運営しているのは、競技団体(協会・連盟)、選手をサポートしている用具メーカー、またはそのどちらでもない有志によるサポートチームも存在する。
有志のサポートチームは会場近くのマンションを独自に借り、選手村に入れない選手やスタッフにも、食事やマッサージなどコンディショニングに関わるサポートを行っている。
彼らは、栄養士・トレーナー・鍼灸・マッサージなどのスキルを持った20~30代の若者で構成される「リオ五輪研修プロジェクト」総勢16人のメンバーである。企業のサポートなども受けながら、オリンピック公園近くに拠点を構える。
我々も日本食の弁当を現地でいただいたが、地球の裏側のリオでこれが食べられるのは本当にありがたかった。
この活動を束ねるアセンダーズの橋本貴智代表に話を聞くと、このプロジェクトには当初約200人の応募があり、そこから面接で絞って今回派遣された16人が選ばれたとのことだ。ただし、滞在費以外の渡航費などはすべて自腹である。「自国で行われる東京五輪で何かの役に立ちたい」という思いから、「直近のリオ五輪に来ない選択肢はなかった」と皆、口をそろえる。
リオには治安や物資調達の不安があるため、現地を訪れる企業関係者やメディアの数は、前回のロンドン五輪よりも大幅に少ないと言われている。このため、彼らの「独自サポート」の貢献は大きいと思われる。