「テクノロジーはスポーツの可能性を広げる。そのポテンシャルに期待している」――。男子ハンマー投げ競技のオリンピアンであり、スポーツ科学者でもある室伏広治氏。東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会 スポーツディレクターも務める同氏が、スポーツにおける「テクノロジー」の可能性について、熱弁を奮った。

 2015年9月7~8日に東京ビッグサイトTFTホールで開催されたイベント「Wearable Tech Expo in Tokyo 2015」では「“連携”か“創造”か。スポーツ×テクノロジーが向かうべき未来」と題するパネルディスカッションが開催された。室伏氏は、ケイ・オプティコムの山下慶太氏、meleapの福田浩士氏らとともに登壇した(同イベントの関連記事1:ホリエモンも参戦、脳科学者が語るAI、関連記事2:メガネ型端末による眼の疲労は15分に1回の休憩で防げる)。

パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子
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 室伏氏はまず、自身のトレーニングにおいて、ハンマーの加速をモーションセンサーを使って可視化する試みを紹介した。ハンマー投げでは「手元にトルクが働かないため、なかなかうまくハンマーが加速しないという難しさがある。ワイヤー方向に引っ張られる感覚はあるが、(それと直角を成す)接線方向の加速が分かりにくい」という。

 そこで、「パラメーター励振」の理論でハンマーの動きをモデル化。投てきの際に加えたエネルギーがハンマーの加速にどれほど効率よく変換されているかを「音」でフィードバックするシステムを、大学の研究者などとともに開発した。

 2012年のロンドン五輪前のトレーニングなどにこの方法を導入。この際の知見は後に、セイコーエプソンの運動解析システム「M-Tracer」やミズノのバットスイング解析システムなどの開発にも影響を与えたという(関連記事)。こうしたセンサーはアスリートに「“人工脳”とでも呼べる第6感を与える」(室伏氏)。