前回までの連載記事で、今後のモビリティー社会の変化を「パワートレーンの多様化」「クルマの知能化・IoT化」「シェアリングサービスの急拡大」という三つの要因を挙げて分析してきた。

 今回からは、これらの要因によってもたらされる社会変化が自動車産業の各プレイヤーに与える影響について考察する。初回はまず、自動車産業の中心的存在である乗用車メーカーに焦点を当てる。「今後のモビリティー社会が乗用車メーカーにどのような影響を与えるのか」という点について、乗用車メーカーの販売台数と収益性に着目しながら分析していく。

三つのドライバーによる驚愕のインパクト

 まず、非常に楽観的な見方では、主に新興国における人口と所得の増加に伴い、2030年のグローバル自動車販売台数は約1億8000万台になると言われている。2015年の約9000万台に対して15年間で倍増するわけだが、現実的には新興国の新車購買率の平準化によって、そこまでは増えないだろう。

 実際に現在の新興国では、モータリゼーションの波に乗って中低所得者層が自身の所得水準に見合わない無理な購買をしていることは明らかである。こうした購買行動は徐々に落ち着いてくる。そのため2030年の現実的な販売台数は、約1億3000万台にとどまるとデロイトは予測している。

 また、台数よりも収益に影響がある要素として、セグメントミックスの変化を挙げたい。今後、地域を問わず、中価格帯(量販車)はシェアを失い、低価格帯(小型車)が着実にシェアを伸ばす。これは消費者がより実用的で経済的なクルマを求めるようになるからだ。さらに、電動化やカーシェアの普及が小型車シフトを後押しするだろう。

 こうした低価格帯(小型車)へのシフトは、仮に現在のセグメントミックスが一定のままだった場合と比較して、グローバルで売上高を約9%、営業利益を約7%減少させるとデロイトは試算している。これは特に、量販車を収益源としてきた大手乗用車メーカーにとって大きな痛手となる。

 次に、冒頭で述べた三つの社会変化が乗用車メーカーに与える影響を検証する。