2030年には自動車産業を一変させるであろう「モビリティー革命」が、既に始まっている。第1回では、モビリティー革命を引き起こす三つの要因を挙げた。今回は、一つ目の要因であるパワートレーンの多様化に関する点について取り上げていく。

ティッピング・ポイントの抑止
本気の挑戦が始まった

 産業革命前からの気温上昇が2℃を超えると、地球環境に壊滅的かつ不可逆的なダメージを与えるという「ティッピング・ポイント」に関する認識は、世界のコンセンサスとなっている。国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)は2014年3月の報告書で、「20世紀末に比べて気温が2℃以上上昇すると生態系や気象などへの影響が大きくなり、食糧生産の減少や大規模な移住、紛争、貧困といった深刻な問題を引き起こす」と指摘した。

 2015年末にはパリでCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)が開催され、「パリ協定」が合意された。同協定では、世界の平均気温上昇を2℃未満に抑えること(1.5℃に抑えることがリスク削減に大きく貢献することにも言及)に向けて世界全体で、人間活動による温室効果ガス排出量を今世紀後半には実質的にゼロにしていく方向が打ち出された。

 また各国首脳や企業トップは、パリ協定に同調する声明を発表した。今後、地球温暖化の抑制に向け、国際社会・各国政府・企業・NGO(非政府組織)、あらゆるステークホルダーが、これまでにないレベルでCO2削減に本気で取り組んでいくことになるだろう。