「モビリティー革命」を起こす三つの要因のうち、第2回では「パワートレーンの多様化」、第3回では「クルマの知能化・IoT化」について考察した。今回は、最後の要因である「シェアリングサービス」を取り上げる。

「UBER」の衝撃

 読者の皆さんは、「UBER」(ウーバー)というスマートフォンのアプリケーションをご存知だろうか。いわゆる「ライドシェア」と呼ばれるサービスで、自分が指定した場所の周辺にいる運転者が迎えに来て、指定した目的地まで送ってくれるものである。料金は事前に登録しておいたクレジットカードから自動的に決済される。

図1 「UBER」の利用履歴画面
図1 「UBER」の利用履歴画面
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 日本においては規制上(1)、UBERを利用してもタクシーが迎えに来る上、東京都内でも利用できるエリア・車両が限られている。しかし世界では2009年の創業からわずか7年足らずで、68か国の400以上の都市で展開するサービスとなった。なぜ、ここまで急速に普及したのだろうか。

 UBERがタクシー利用者を取り込みながら普及している理由は主に三つある。第1に「安い」ことである。先日、筆者がロサンゼルスに出張した際、ホテルから空港まで約15kmの距離を20分弱かけてUBERで移動したが、費用は17ドルだった。タクシーを利用した場合、30ドル以上かかっていたことを踏まえると、UBERは約半額という計算になる(図1)。

 第2に「便利」である。海外出張中にタクシーをつかまえようとして苦労されたことはないだろうか。横から別の利用者が割り込んだり、タクシーの運転手から乗車を拒否されたり、英語力が足りず目的地を正確に伝えられなかったりするなど、苦労話は絶えない。これに対してUBERはアプリで車両を呼び出すため確実に乗車できる上、Google Mapと連動しており自身の位置情報に加え、アプリ上で目的地を検索入力すれば自動的に目的地も特定してくれる。そのため、前述のような問題は起こりようがない。

 第3に「安心」できる。利用者がUBERで目的地を設定すると、周辺にいる複数の運転者にその通知が届く仕組みで、もし2人以上の運転者が名乗りを上げると、ユーザーは各運転者の車両名や過去の満足度評価の結果を参考にしながら、最も気に入った一人を選択できるようになっている。また、料金はあらかじめ見積もりができるため透明である。降車後に運転者に対する満足度を5段階で評価できるため、運転者は運転やルート判断のスキルに加え、接客のスキルも磨かねばならない。


(1)第二種運転免許:道路交通法上の免許区分のひとつで、バスやタクシーなどの旅客輸送を目的とした運転を行う場合に必要となる免許