C60の構造式
建築家のバックミンスター・フラー氏が設計したドーム建築が似た形であることから,「バッキーボール」とも呼ばれている。
C60の場合直径は0.7~1.0nmで,炭素原子だけからなる。分子構造としては6員環と5員環からなり炭素−炭素の1重結合と2重結合が交互に存在する。つまり,π電子共役ネットワークを持つことから,電子を受け取りやすい,がん細胞を攻撃する,美白効果がある,といった様々な特徴を発現する。また,炭素−炭素の二重結合は反応性が高いことから,様々な誘導体が合成されており,燃料電池の固体電解質材料,磁石,超伝導体など多様な研究が進んでいる。
《供給動向》年産40tの設備が稼動,価格は500円/g
【図1】酸化フラーレンの構造式(理化学研究所)(クリックで拡大図を表示)
このところ盛んになっているのはフラーレンの様々な誘導体の合成である。最近発見された誘導体としては,酸化フラーレンがある(図1)。フロンティアカーボンが開発したもので,フラーレンC60を酸化反応させることにより,二つの炭素原子をまたがるようにして酸素原子を付けたものだ。サンプル出荷も始まっている。この酸化フラーレンに官能基を付加する反応法も開発され,今後フラーレン分子1個に付き一つの官能基をつけることが可能になり,フラーレンの特徴を保ちながら優れた機能を発揮する材料になると期待されている。
《開発状況》スポーツ用品に採用進む
【図2】フラーレン入りのテニスラケット「NANOSPEED RQ7 MID PLUS」(ヨネックス)を使っているスロバキアのDaniela
フラーレンは特許の動向からみると応用面での検討,アイデアが先行したきらいがあり,実際の用途開拓を進めるうえでも材料面での検討がもっと必要だという認識が出てきている。