ハイブリッドHDDを使ってOSの起動を高速化したり,消費電力を低減したりするための技術の総称。NANDフラッシュ・メモリをHDDのキャッシュとして用いる。米Microsoft Corp.のOS「Windows Vista」が搭載する予定である。ATAの拡張コマンド「ATA-8 cache command set」を利用して,ハイブリッドHDDに搭載したNANDフラッシュ・メモリへのファイル書き込みなどを制御する。

 Windows VistaではNANDフラッシュ・メモリを「ブート・ファイル格納領域」「アプリケーション・ソフトウエア格納領域」「読み出しキャッシュ」「書き込みキャッシュ」の四つの領域に分けて使う。パソコンの起動時にNANDフラッシュ・メモリからOSのブート・ファイルを読み出すことで起動時間を短くする。HDDのスピンアップが完了するまではNANDフラッシュ・メモリからデータを読み,HDDの準備ができ次第,フラッシュ・メモリとHDDの両方から残りのデータを転送する。パソコンの電源を切る際に,NANDフラッシュ・メモリにブート・ファイルが保存される。ハイブリッドHDDが搭載するNANDフラッシュ・メモリの容量が256Mバイトの場合,この領域として標準で64Mバイトが確保される。
 
このほか読み出しキャッシュは複数のアプリケーション・ソフトウエアが使うDLLファイルや仮想メモリのページ(4Kバイト単位のメモリ・ブロック)を保存する。パソコンを使っているときに動作がもたつく主な原因であるHDDへのスワップをできるだけなくすことで,操作性が向上する。

 ReadyDriveの類似の技術としては米Intel Corp.が提唱するRobsonがある。両者の違いは使用できるOSやHDD,マイクロプロセサにある。ReadyDriveでは使用可能なOSはWindows Vistaに限られており,ハイブリッドHDDの搭載が前提となっている。マイクロプロセサやチップセットは選ばない。これに対してRobsonは通常のHDDが使え,OSもWindows Vistaに限らない。ただし,米Advanced Micro Devices,Inc.などの他社製マイクロプロセサを使うことができない。

図 ReadyDriveの仕組み
図 ReadyDriveの仕組み(日経エレクトロニクス2006年7月31日号より抜粋)