第1部<トレンド>
多品種大量をこなす能力で
世界制覇に必須の存在に

 「起動が遅い」。かつてはパソコン特有といえたこの問題が,高機能化が進むデジタル家電の設計者の頭を悩ませている。すさまじい勢いで進むNANDフラッシュ・メモリの低価格化が,この問題に解を与えそうだ。従来の起動時間の短縮技術が限界に近づく中,NANDフラッシュ・メモリを使って起動時間を抜本的に短縮する新しい技術の実装が現実味を帯びてきた。NANDフラッシュ・メモリをHDDの代わりに使ったり,主記憶などの状態をそのまま保存したりする。デジタル家電,そしてパソコンでも「瞬間起動」の実現は近い。

第2部<パソコン>
HDDのボトルネックを解消
SSDは1.8インチ型を置き換え

 パソコンでは,性能面のボトルネックであるHDDの機械的な動作による遅延を解消する技術の導入が本格化する。NANDフラッシュ・メモリを搭載した半導体ディスク装置と,そこへの「中継ぎ」ともいえるNANDフラッシュ・メモリとHDDの併用技術だ。前者は既に搭載が始まり,後者は2007年に採用が本格化する。パソコンの設計者は,瞬間起動の実現に向け,性能とコストなどのバランスを考慮しながら,これらの選択肢を評価していく必要がある。

第3部<デジタル家電>
起動時間は10秒以下へ
対応技術が続々登場

 ハイバネーション技術を使った高速起動にデジタル家電メーカーの注目が集まっている。「使いたいときにボタン一つで即座に起動する機器が欲しい」という消費者の声に応えるためである。フラッシュ・メモリの価格下落が採用を後押しする。組み込み機器でハイバネーションを実現するための開発環境も整ってきた。早ければ,1年後にもハイバネーションを用いた高速起動のデジタル家電が登場する。