有料道路の自動料金収受システム。有料道路の料金所にあるアンテナと,車に搭載した車載器が無線通信することで,料金所を一時停止することなく通過できるシステムである。当初,当時の建設省や道路4公団(日本道路公団,首都高速道路公団,阪神高速道路公団,本州四国連絡橋公団),メーカーが中心となって,1995年度から研究開発,実用化を進めてきた。1997年3月に神奈川県の小田原厚木道路の小田原料金所,同12月に東京湾アクアラインで試験運用が始まった。現在は,広く普及し始めている。

 無線周波数は5.8GHz,変調方式にはスプリットフェーズ符号を使用したASK変調方式を採用する。なお,ETCは電波の反射に弱く,そのまま使うと通信品質を保てないため,ゲートの近辺には電波吸収シートが張り付けられている。その一因として,ASKという振幅方向にシンボル情報を割り当てる変調方式を採用したためと指摘する声がある。干渉により振幅の大きさは大幅に変動するためである。無線通信のある専門家は,「実用化時期から干渉に強い変調方式OFDMが間に合わなかったのは仕方がないが,せめてPSKにしておけばシステム設計がもっと楽だったはず」と指摘する。実際,この後標準仕様が策定された同じく5.8GHz帯を利用するITS向けの狭域通信システムDSRC(DSRC:Dedicated Short Range Communications)では,ASKに加えて,QPSKが追加された(表1)。

表 ETCとDSRC(DSRC諮問時の総務省の発表資料から)表 ETCとDSRC(DSRC諮問時の総務省の発表資料から)