1対の信号線を使ってデータを伝送する方式のこと。対をなす2本の信号線にはそれぞれ逆位相の信号を伝送する。差動伝送に対して,1本の信号線だけでデータを伝送する方式のことをシングルエンド伝送という。PCI ExpressSerial ATAHDMIなど最近の入出力インタフェースの多くは差動伝送となっている。

 差動伝送はシングル伝送に比べて,信号振幅を小さくできる分,データ伝送速度を高速にできるのが特徴である。従来のシングルエンド伝送だと,例えば0Vを「0」,2.5Vを「1」として,0Vから2.5Vまで遷移させる必要があった。これに対して差動伝送だと小振幅にできるため,例えば2.1Vを「0」,2.5Vを「1」とすれば,遷移に必要な電位差はわずか0.4Vで済む。振幅(電位差)が小さい分だけ,0から1への切り替えに要する時間を短くできるため,信号周波数を高速にできる。

 差動伝送はコモン・モード雑音に強いという特徴もある。逆位相の信号に対して同じコモン・モード雑音が重畳するため,受信端で信号線対の差分を取る時点でその影響を相殺できるためだ。このほか,シングルエンド伝送に比べて信号周波数を高められる分,少ない信号線数でデータを伝送できる。

図1 差動伝送の仕組み
図1 差動伝送の仕組み日経エレクトロニクス2005年11月21日号より抜粋)