プリント配線基板の上を1GHzを超える周波数の信号が走り始めた。急増する伝送損失への対応やスキューの抑制など,これまで以上に高いハードルが設計現場に立ちふさがる。メインフレームや通信機器で培った技術力の有無がメーカー間に大きな差を生む可能性が高い。

第1部<新たな競争軸>
GHz伝送時代の幕開けで 露呈する技術力の差

「百貨店体質」と揶揄やゆされてきた大手総合電機メーカーがパソコンやサーバ機,通信機器などのハードウエア事業で復活を遂げつつある。大型機器の開発で蓄積したノウハウを結集して,より小型の機器のソフトウエアや半導体の開発に取り組む,いわゆる技術のダウンサイジングを進めたことがその原動力だ。プリント配線基板の上を伝送する信号の周波数が1GHzを超える「GHz時代」の幕開けとともに今度はボード設計にダウンサイジングの波が押し寄せる。通信機器やメインフレームなどで培った高速ボードの設計ノウハウを持つメーカーが,開発力を発揮する。

第2部<先行事例>
LSIや基板で付加価値向上 長年の技術蓄積を生かす

1GHzを超える信号の伝送が,パソコンやサーバ機のプリント配線基板で始まった。先行したのは高速ボード設計技術のノウハウを持つ総合電機メーカー。独自技術を投入することで,機器の付加価値向上につなげている。「1GHzを超えるのは難しい」といわれていたシングルエンド伝送方式をあえて採用することでサーバ機のコスト削減につなげたメーカーもあれば,低損失のプリント配線基板を自ら開発したノート・パソコン・メーカーもある。長年の経験はシミュレーションや測定にも生きる。

第3部<電気の延命策>
無線技術の投入で 25Gビット/秒を射程に

これまで幾度となく高速化に限界論がささやかれてきた,プリント配線基板上の電気伝送。そのたびに通信分野で培った技術を取り込むことで,データ伝送速度を引き上げてきた。数年前には光伝送への入り口とみられていた10Gビット/秒の壁も今や崩れようとしている。さらに先を見据える研究者の目標は25Gビット/秒に移った。そのために,通信分野で培われた伝送ノウハウを貪欲に取り込みながら進化を続ける。カギを握るのは無線用途で磨かれた伝送技術だ。MIMOにLDPC符号化,OFDMなど注目の技術は多い。