指紋を読み取るセンサのこと。個人を特定する手段として利用できる。生体の特徴を元に個人を識別するというバイオメトリクスの有力な手法の1つとして期待されており,その読み取り装置として開発が加速している。個人情報保護法が2005年4月に施行されたことや,携帯機器を使った電子決済の利用が進んでいることから,より安全性の高い生体認証を利用する動きが活発化している。指紋による個人認証は歴史が古い上,警察などの公的機関では個人を特定する手段として正式に採用するなど,信頼性が高いのが特徴である。

 携帯機器向けの指紋センサにおける指紋認証は,まず機器に搭載した指紋センサで指紋画像を取得し,その画像を照合して判定する(図1)。最近の傾向としては,個人認証の機能だけでなく,指紋センサをタッチ・パッドのように利用できる「ナビゲーション」機能を付加した品種が数多く登場している。これらを使うことで,従来配置していたスイッチを代替でき,部品を集約できる。  現行の指紋センサは,(1)静電容量式,(2)電界検知式,(3)光学式,(4)感熱式,(5)感圧式,に分けられる(図2)。指紋の読み取りの形態としては,指全体を押し当てる平面型と,指を滑らせるスイープ型がある。携帯機器向けではセンサの検知領域の面積を1/3以下にできることから,設置面積とコストの低減が共に図れるスイープ型の採用が多い。

図1 さまざまな方式がある指紋センサと照合アルゴリズム
図1 さまざまな方式がある指紋センサと照合アルゴリズム
現状の指紋センサは,大きく分けて5つの方式がある。読み取った指紋画像は,指紋のパターンを照合する「パターン・マッチング」や,指紋の切れ目(端点)や分岐点などの特徴点を利用する「特徴点抽出」,指紋のパターンを周波数軸上に変換して照合する「周波数解析」などのアルゴリズムを利用して照合する。
(日経エレクトロニクス2006年1月30日号より抜粋)

図2 方式によって異なる構造
図2 方式によって異なる構造 (日経エレクトロニクス2006年1月30日号より抜粋)