ソース-ドレイン間のリーク電流などを防ぐことを目的とした,3次元構造の電界効果型トランジスタの一種。現在の一般的な電界効果型トランジスタでは,Si基板にソースとドレインを作り,その上部に絶縁膜を介して1個のゲートがある構造を採用している(図1)。このゲートに電圧を印加して,ソース-ドレイン間を流れる電流をオン/オフする。電流が流れるチャネル部分では,ゲートから離れるにつれて電位が接地してあるSi基板の電位(0V)に近付いてしまい,ゲート電圧で制御するのは難しい。これに対し,チャネルの上下にゲートを設けたダブル・ゲート構造がある(図2)。チャネル部分の電位をゲート電圧で制御しやすい。「フィン型FET」では,ソースとドレインの間を薄いひれ(フィン)状に加工したSi層で結び,フィンを絶縁膜とゲートによって「コ」の字型に覆う(図3)。このSi層の形状にちなんでフィン型FETと呼ぶ。チャネルは3方向をゲートで囲まれているので,チャネル部分の電位をゲート電圧でより制御しやすくなり,スイッチング特性が改善する。ゲート長が短くてもリーク電流を抑えやすい。

 現在,論理回路のゲートやSRAMなどに向けた研究開発が進んでいる。また,フラッシュEEPROMのメモリ・セルでもフィン型FETが実用化されると言われている。フィン型FETの構造により,浮遊ゲートとSi基板を隔てる絶縁膜の静電容量が増すため,しきい値電圧のバラつきを抑えることができるなどの利点があるためである。

現在一般に使われるバルクSi基板を使ったMOSトランジスタの構造 図1 現在一般に使われるバルクSi基板を使ったMOSトランジスタの構造
一般的なダブル・ゲートの構造 図2 一般的なダブル・ゲートの構造
フィン型FETの構造 図3 フィン型FETの構造
(図1,図3 2005年5月23日号より,図2 2000年12月18日号より抜粋)