Javaアプリケーションの統合開発環境として広く使われるオープンソースのツール群の総称である。公開から約5年で事実上の標準の地位を獲得した。プラグインと呼ばれる部品の追加で機能を容易に拡張できるのが特徴である。プラグイン情報を集約したWWWサイトの1つである「Eclipse-Plugins.info」には現時点で800以上も登録されている。C/C++言語でソフトウエアを開発するための複数のプラグインを組み合わせた「CDT(C/C++ development tools)」も公開されている。2004年ごろから,組み込みOSのベンダーが相次いで開発環境のEclipse版を提供し始め,組み込みソフトウエア業界にも普及する兆しが見えている。

 米IBM Corp.がJavaで開発したソフトウエア開発環境を2001年11月にオープンソースとして公開したのが起源である。IBM社の公開後,Eclipseはサーバ機で動作するソフトウエアの開発で急速に広まった。オープンソース・ソフトは普通,個人ないし数人で開発に着手し,長いテスト期間を経て徐々に普及する。だがEclipseは,急速に多くの企業の賛同を受けて広まった。当初から40人もの開発メンバーを擁し,公開時点で実用に十分な機能,品質を備えていたためである。

 Eclipseが,CPLという比較的商用利用に寛容なオープンソース・ライセンスで提供されたことも,普及を後押しした。CPLでは各ベンダーが,Eclipseを利用して独自に商品化できる。IBMの開発ツールWebSphere Application Developerなど,実際にEclipseをベースにした製品が販売されている。2001年まではJava用開発ツールといえば,IBMのVisulal Ageのほか,ボーランドのJBuilderやオラクルのJDeveloperなどが市場の中心だったが,現在はボーランドやオラクルもEclipseを支持し,Eclipseと連携する開発ツールを売り出している。

 Eclipseのユーザー・コミュニティは,2002年,2003年のJavaOne期間中の小規模な集会を経て,2004年2月に第1回のEclipseカンファレンス(EclipseCon2004)を開催。スポンサー22社,参加者600人以上という盛況となった。EclipseCon2004では,Eclipse Foundationの設立も発表され,IBMの影響が濃いEclipseコンソーシアムから,より中立的なコミュニティへ移行した。日本でも今年の4月に,Eclipse Foundationの参加企業によってEclipse Japan Working Groupが設立された。

図 プラグインを自由に組み合わせて開発環境を構築
図 プラグインを自由に組み合わせて開発環境を構築 (日経エレクトロニクス2005年6月20日号より抜粋)