LSI・パッケージ・ボード(LPB)の設計連携に向けてJEITA LPB相互設計ワーキング・グループ(LPB-WG)が提案した「LPB標準フォーマットV2.0(LPB-V2.0)に、商用EDAツールが対応を開始した。これにより、開発の現場でLPB設計の連携が進むことが期待される。その効果を最大にするにはLPB設計者だけでなく、製造に関連した材料・部品・組立等のサプライヤもこのフォーマットを利用して情報を準備する必要がある。

図1●パネル討論会の様子<br>JEITAが撮影。
図1●パネル討論会の様子
JEITAが撮影。
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 「EDS Fair 2012」(11月14日~16日にパシフィコ横浜で開催)と同時開催された「システム・デザイン・フォーラム 2012」の中で、LPB-WGがパネル討論会を行った(図1)。今回の内容は、2011年1月と11月に行われた「EDSFair 2011 Jan.」と「同 Nov.」の特設ステージの催しの続編である(Tech-On!関連記事1同2同3)。タイトルは、「競争力を創出するLPB標準フォーマットの流通と活用~EDAツールのデモとユーザによる活用方法の議論~」である。

 登壇者は以下の7名。(1)冨島 敦史氏(東芝 セミコンダクター&ストレージ社 アナログ・イメージングIC事業部 設計技術開発部 設計インフラ技術担当 主務)、(2)中川 祐之氏(富士通VLSI 高速・イメージング商品開発本部 ASIC・COT開発統括部 第三設計部 プロジェクト課長)、(3)金子 俊之氏(トッパンNECサーキットソリューションズ 管理本部 設計部 マネージャー)、(4)林 靖二氏(キヤノン 生産技術研究所 実装技術研究部 主任研究員、(5)村田 洋氏(ジェム・デザイン・テクノロジーズ 代表取締役)、(6)古賀 一成氏(図研 技術本部 ELNセクション コデザイングループ チーフ・エンジニア)、(7)門田和博氏(ステイシフト 技術部 シニア・テクニカルマーケティング&エンジニア)である。司会は1部・2部を通して、東芝の福場(LPB-WG主査、東芝 セミコンダクター&ストレージ社 アナログ・イメージングIC事業部 設計技術開発部 設計インフラ技術担当 参事)が務めた。

膠着状態から抜け出す

図2●LPB標準フォーマットの効果<br>JEITAのデータ。
図2●LPB標準フォーマットの効果
JEITAのデータ。
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 最初に、LPB-WG普及活動担当の東芝の冨島氏が、LPB標準フォーマットの効果の具体例を紹介した。同氏によれば、「LPB標準フォーマットで設計をした事例では61%の工期短縮と2週間以上の情報待ち時間削減の効果があった」という(図2)。ただし、「EDAツールがLPB標準フォーマットに対応していることが前提である」(同氏)とした。

図3●膠着状態のイメージ<br>JEITAのデータ。
図3●膠着状態のイメージ
JEITAのデータ。
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 同氏が指摘するように、LPB標準フォーマットが広まるには、EDAツールがLPB標準フォーマットに対応していることが必要だが、EDAベンダの都合ではLPB標準フォーマットがユーザで広く使われていくことが開発の前提である。「まるで、鶏と卵の関係」(同氏)という膠着状態だった(図3)。

 この状態を打開すべく、EDAベンダが先陣を切って、LPB-V2.0を扱えるようにEDAツールを改良した。今度はユーザの番になったと言える。今回のパネル討論会では、市販EDAツールがLPB-V2.0を扱えるようになったことで、設計者が効率よく設計するために十分な条件がそろったかどうかを議論した。