チップ-パッケージ-ボードの協調設計をテーマにしたパネル・ディスカッションが,「EDS Fair 2011」(1月27日と28日にパシフィコ横浜で開催)の特設ステージで行われた。討論会のタイトルは,「設計維新:こうすればできる、LSI/パッケージ・ボードの協調設計~協調設計が日本の製品を変える!~」だった。設計維新は今回のEDSF全体のキャッチ・コピーであり,この討論会ではそれを協調設計で起こすことを狙っていた。

パネル討論会の会場 左下は司会者。日本エレクトロニクスショー協会が撮影。
パネル討論会の会場
左下は司会者。日本エレクトロニクスショー協会が撮影。
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半導体メーカーのパネル討論会 日本エレクトロニクスショー協会が撮影。
半導体メーカーのパネル討論会
日本エレクトロニクスショー協会が撮影。
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セット・メーカーのパネル討論会 日本エレクトロニクスショー協会が撮影。
セット・メーカーのパネル討論会
日本エレクトロニクスショー協会が撮影。
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 合計で12名のパネラが登壇する「大型」の討論会である。司会は日経BPの小島郁太郎氏が務めた。2年前のEDS Fair 2009でも同氏の司会で,同様なテーマでパネル・ディスカッションがあった(Tech-On!関連記事)。今回は,協調設計そのものの意義や課題について,2年前よりも掘り下げた内容だった。パネル・ディスカッションは4部構成で,半導体の声,セットの声,EDAの声,全体のまとめという順序で進んだ。会場には立ち見が出るほど,盛況だった。

まずは半導体のパネルで問題提起

 最初のパネル討論会(半導体の声)には,半導体メーカー3社からパネリストが登壇した。ソニーの田中修治氏(コンスーマー・プロフェッショナル&デバイスグループ 半導体事業本部 設計基盤技術部門 ミックスドシグナルデザインソリューション部 担当部長),富士通セミコンダクターの佐藤厚志氏(開発・製造本部 設計共通技術統括部 第一技術部),リコーの大槻隆志氏(電子デバイスカンパニー 画像LSI開発センター CAD室 シニアスペシャリスト)である。

 タイミングと雑音問題を解決する必要があることや,作り直しが許されないことなどを背景にして,協調設計が不可欠になっていることが明らかにされた。各パネラが,自社における協調設計フローを紹介した。

 また,協調設計には,性能向上やTATの短縮,コスト削減に加えて,ボードまで含めたリファレンス設計の提供による付加価値の向上や,トラブル・シューティング時間の削減といった効果があるとの指摘があった。ただし,セットアップや設計変更の反映が煩雑だったりする課題があり,その克服が必要ということでパネラ間で意見が一致した。

セット・メーカーによるボード設計時に半導体モデルは必須

 2番目のパネルは,セット・メーカーのエンジニアが3名登壇して行われた。東芝の岡野資睦氏(デジタルプロダクツ&ネットワーク社 デジタルプロダクツ開発センター 実装開発センター CAD・CAE推進担当 主務),トッパンNECサーキット ソリューションズの金子俊之氏(設計部 マネジャー),キヤノンの林靖二氏(生産技術本部 生産技術研究所 実装技術第三研究室)である。

 このパネルでは、「基板上の対策だけではタイミングや電圧のマージンの確保が困難である」という意見が出た。また協調設計で行える対策として,バッファ能力や,信号/電源/グランド・ピンのアサインの最適化が挙げられ,実際の解析例が示された。

 従来,セット・メーカーでのボード設計は,半導体(ICやLSI)が出来上がってからスタートしていた。今回のパネルでは,そのスタイルから脱却して,半導体とボードを同時に設計するスタイルへの変革が必要だとした。

 それを実現するためには,半導体メーカーが必要なモデルを提供することが欠かせないとの意見が出た。また,半導体設計とボード設計の間で用語や言葉の定義を合わせておき,設計指針の決定時に「勘違い」が起こらいようにすることも大切だとの指摘があった。