米United States Bankruptcy court(米国破産裁判所)は、カナダNortel Networks社が、同社のIPv4アドレス66万6624個を、米Microsoft社に750万米ドル(約6億3000万円)で譲渡することを決めたと発表した。IPv4アドレス1個に11米ドル25セント(約945円)の値がついた計算になる。北米地域でのIPv4アドレスの移転例としては、最大規模となった。

 Nortel社は2009年1月に米連邦破産法11条(Chapter 11)を申請し、現在は各種資産の売却を進めている(関連記事1関連記事2)。その一環でIPv4アドレスも2010年に競売にかけられ、2010年12月までに80社超の入札があったとする。Nortel社はその中の14社と諸条件について協議し、2011年1月に再度の入札を7社から受けた。そして2011年3月、最終的にNortel社とMicrosoft社がIPv4アドレスの譲渡について合意した。譲渡手続きは2011年4月26日に完了する見通しである。

 ただし、Microsoft社がすぐに利用できるIPv4アドレスは、66万6624個のうち47万16個に留まる。残る19万6608個はNortel社の各事業を買収した複数の企業が利用中であるため、Microsoft社はNortel社とそれら企業との契約が終了する2011年末まで待つことになる。

日本でも2011年夏にはIPv4アドレスの移転が解禁へ

 米国では、IPアドレスの配布や登録を管理する組織である米ARIN(American Registry for Internet Numbers)が2009年に、事業者間でのIPv4アドレスの移転を解禁した。名称は「移転(transfer)」だが、移転の際に事業者間で取り決める諸条件にARINは関与しないとしているため、事実上のIPv4アドレスの売買の解禁と同義になる。

 アジア・太平洋地域のIPアドレスの配布や登録を管理するAPNIC(Asia Pacific Network Information Centre)も2010年2月にIPv4アドレスの移転を解禁した。ただし、「企業買収に伴う例を別にした、IPv4アドレスだけを移転した例はまだない」(日本でのIPアドレス管理を担当するJPNIC)という。

 日本国内でも2011年夏を目標に、JPNICがIPv4アドレスの移転を解禁するための検討を進めている(日経エレクトロニクスの関連記事)。もっとも、完全な自由市場にはならない見通しだ。理由は、譲渡する側がJPNICの会員であり、しかも譲渡される側がJPNICの会員になることなど、いくつか条件が付くためである。