図1 フェムトセル向けの「PSC9130」および「同9131」のブロック図
図1 フェムトセル向けの「PSC9130」および「同9131」のブロック図
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図2 ピコセル向けの「PSC9132」のブロック図
図2 ピコセル向けの「PSC9132」のブロック図
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 米Freescale Semiconductor, Inc.は,スペイン・バルセロナで開催中の「Mobile World Congress 2011」において,LTEやW-CDMAなどに対応する基地局装置向けのSoC製品群「QorIQ Qonverge」(コアアイキュー・コンバージ)を発表した。パケット処理用のCPUと,ベースバンド処理用のDSPやアクセラレータ回路を1チップに集積したのが特徴で,移動通信用基地局装置の主要機能を統合した「Base-station on a chip」であるとFreescale社は説明する。併せて,フェムトセル向けからマクロセル向けまで,処理負荷が異なる品種間で基本アーキテクチャを共通化する方針も打ち出した。

 Freescale社は現在,基地局装置向けに,パケット処理用のマイクロプロセサ「QorIQ」シリーズ(Tech-On!の関連記事1)や,ベースバンド処理用のDSP(「StarCore」シリーズのDSPコアを集積したもの,同関連記事2)を提供している。このQorIQとDSPを統合したのがQorIQ Qonvergeシリーズである。最初の製品として,最大8および16ユーザーを想定するフェムトセル向けの「PSC9130」および「PSC9131」,最大32~64ユーザーを想定するピコセル向けの「PSC9132」を製品化した。LTEおよびW-CDMAに対応するピコセルに関するFreescale社の試算では,複数のチップで構成する場合に比べて,パケット処理やベースバンド処理を行う部分のコストと消費電力をいずれも1/4に削減できるという。

基地局の規模に合わせてプロセサ数を変更

 PSC9130および同9131は,CPUに「e500」コアを1個,DSPに「SC3850」コアを1個,ターボ符号やビタビ符号,FFT(高速フーリエ変換)などを行うベースバンド処理用アクセラレータ,暗号化エンジンなどを集積し,マルチコア・プロセサ用のファブリック型オンチップ・インタフェースでそれぞれの回路ブロックを接続している(図1)。DDR3対応のメモリ・コントローラを1チャネル備える。家庭用フェムトセルを想定する9130は最大800MHz,業務用フェムトセルを想定する9131は最大1GHzで動作する。

 PSC9132は,基本アーキテクチャを踏襲しながら,CPUコアとDSPコアを2個ずつ搭載し,DDR3対応のメモリ・コントローラも2チャネルに増やしたものである(図2)。このほか,ベースバンド処理用アクセラレータにMIMO処理のイコライザを追加したほか,PCI ExpressやCPRIなどの外部インタフェースも追加した。

 いずれも45nm世代の技術で製造する。2011年第3四半期にサンプル出荷を始め,2011年中に量産を開始する予定である。DSPやCPUで動作させるベースバンド処理やパケット処理のソフトウエアも,Freescale社および協力企業が提供できるようにする。

 Freescale社は製造技術の28nm世代への移行に合わせて,数百ユーザーのマイクロセル向け,数千ユーザーのマクロセル向けの品種も開発する。基本となるアーキテクチャは変えずに,プロセサ・コアを増やすことなどによって処理負荷の増大に対応する方針である。