センサ・ネットワークの基礎を学ぶ連載の2回目。前回は,センサ・ネットワークを規模やトポロジーで整理しました。今回は,センサ・ネットワークの応用先として,個人向け,特定グループ向け,社会インフラのそれぞれで,どのような例があるかを取り上げます。連載の目次はこちら(本記事は,『日経エレクトロニクス』,2008年4月7日号,「NEプラス」,pp.56-59から転載しました。内容は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

 センサ・ネットワークの規模はBANからWWNまで広がっていますが,応用分野もそれに呼応して,「個人」「特定グループ」「社会インフラ」に分けて考えられます(図4)。特定グループというのは,企業,住宅など利害得失を共にする団体を指します。以下,特に注目されるものについて述べます。

図4 応用の方向性
図4 応用の方向性 (画像のクリックで拡大)

個人:健康管理やゲームなどに応用

 個人ユースでは,ヘルスケア支援や娯楽などの応用が考えられます。BANやPANという形で実現できます。

 日本の政府は,医療給付費削減を狙って在宅医療を推進しています。こうした中で,無線センシングはヘルスケアを支援するものと位置付けられています。基本は,体温,心拍などの情報を人体に装着するウエアラブル・センサとすることです。フィンランドPolar Electro社は,心拍センサを中心とする生体センサ・ノードを開発する代表的な企業であり,日常生活での健康管理を支援する製品を多数開発しています。国内においても,日立製作所は健康管理のできる心拍センサと加速度センサを搭載するリストバンド型センサ・ノードを製品化しています。心拍センサと加速度センサを利用することで,例えば,睡眠,散歩,室内歩行といった毎日の生活リズムと体調を,時系列データとして蓄積できます。もし,通常と異なる変化が見られた場合,システムが体調の異変を察知し,迅速に医療機関へ通報するなど何らかの対処を図ることができます。