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電子写真立てにおける3D表示を想定した実演。ただし,電子写真立ては用いておらず,壁に埋め込んだ液晶モニターを使用
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電子写真立ての背面
電子写真立ての背面
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 富士フイルムは,「FinePix Real 3D System」をカメラ関連の展示会「photokina」に出展した。このシステムは,世界で初めて3次元(3D)の静止画と動画を撮り裸眼で見ることができるコンパクト・カメラと,裸眼に対応したデジタル・フォト・フレーム(電子写真立て),立体的に見える写真の印刷方法で構成する(関連記事ニュース・リリース機能を紹介する動画)。同社は2009年中の商品化を検討している。

 システムの構成要素の概要は以下の通り。

■デジタル・カメラ(動作する試作機)

― 二組のレンズと撮像素子で同時に撮影。レンズ間の距離は,ヒトの両目の距離に相当する6~7cm。3D化しないときには,左右のズーム倍率や露出を変えて2D画像を撮ったり,2つの2D画像からパノラマ画像を生成することが可能可能。

― 右目用の画像と,左目用の画像はそれぞれ通常のカメラでも実行する高画質化処理を施した後,1枚の画像に統合する。この統合時に立体視効果を高める,やや簡素な画像処理を施す。1枚の画像に統合するのは,ユーザーの画像管理を煩わしくさせないため。

― 富士フイルムが通常用いているカメラ用画像処理LSIを一部改変して転用。シャッター・タイミングの同期などが可能になった。試作機を使う限りでは,シャッター・ボタンを押してから3Dの静止画・動画を表示するまでの待ち時間が特に増えているようには感じなかった。

― 背面液晶モニターは2.8型のQVGA品。視差バリアやレンチキュラ・レンズを利用すると表示した画像の精細感が損なわれるが,今回はそうした問題がない。この解決策の詳細は明かしていないが,バックライトから発する光の方向を制御しているという。

― 観察者が液晶モニターを見るときに頭を左右に動かすと,一般に逆視現象が生じて目が疲れるが,今回はそれが発生せず2Dに見えるという。この結果,立体視効果が弱くなる場合があるが,購入者に不快感を抱かせず長く使い続けてもらうための措置。

― 液晶モニターに表示するメニューも立体的に表示。選択中の項目が浮き出て見えるので,分かりやすい。ただし,既存の2Dのメニューをほとんどそのまま転用していたので,選択中の項目とそうでないものの色の差が不必要に大きく感じるなど,調整が必要と感じられた。

― 会場で試用した来場者の中には,動画でイベント・コンパニオンを撮影したときに,特に迫力があって印象深いという声が挙がっていた。

■3D対応電子写真立て(モックアップ)

― 通常の液晶モニターでは立体視が不可能なので,必須と考えて発売。

― 画面寸法は8.4型とやや大きめ。解像度はVGA。モックアップの展示にとどまり,それ自体もボタン類が見当たらないなど,あまり完成度が高くない印象。

■印刷方法

― 紙の上で3D画像で楽しめるようにすることは,紙の写真文化を支えてきた富士フイルムのこだわり。3D対応電子写真立てを持っていない友人に,3D画像をプレゼントできるようにしたかったという。

― 技術面ではあまり新規性がない。ごく一般的な方法で写真を印刷した上で,レンチキュラ・レンズ・シートをかぶせた。展示されていた写真のドット密度は300dpiから1200dpiの間。富士フイルムは,印刷物と眼の距離が40cmのとき,最も立体的に見えるように設計した。



 Photokinaの会場で,FinePix Real 3D Systemの開発者に話を聞いた。

――なぜ今,立体視に取り組むのか。

 画像の奥行き方向の情報を再現する楽しみを,そろそろ提供すべき時期が訪れたからだ。一般の消費者にとって2次元の空間解像度はもう十分高まった。一つの画像内での明るい場所と暗い場所の同時表現能力(ダイナミックレンジ)も,当社が開発した新しい撮像素子を使えば,ほとんどの人は不満を感じないだろう(撮像素子については後日掲載予定)。映画産業で,3次元画像の活用が始まったことも我々の商品化を後押しした(関連する日経エレクトロニクスの特集関連ブログ)。より自然な立体表現に関する技術は,3D映画によってますます進化するだろう。

――立体視効果が出やすい構図と,そうでない構図がある。この問題をどうとらえているのか。

 まだ商品を世に送り出していないので確かなことは言えないが,試行錯誤が面白いと思ってもらえるのではないか。もちろん,それを煩わしいと感じる人もいるだろう。そうした人に向けて,3D効果をプレビューしたり,その効果を引き出すアドバイスをしたりする機能を将来用意していきたい。

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