左からの順番,Yahoo!社のCody Simms氏やPlaxo社のJohn McCrea氏,Google社のKevin Marks氏
左からの順番,Yahoo!社のCody Simms氏やPlaxo社のJohn McCrea氏,Google社のKevin Marks氏
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 米国のメディア業界では,ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)がユーザーのメディア動向に与える影響が大きいと認識されている。こうした背景から,米カリフォルニア州サンノゼ市で2008年8月5日~7日に開催されたコンテンツ技術に関連するイベント「Building Blocks 2008」では,SNS事業を手掛ける米Google Inc.や米Yahoo! Inc.,米Plaxo, Inc.のパネリストによる「SNSのオープン化」に関する討論に注目が集まった。

 主な話題は,Google社が2007年11月に発表した「OpenSocial」の標準化に集まった(発表資料)。OpenSocialの特徴はソーシャル・グラフ(人と人との相関図,関係図)のデータを共有するためにサーバー側の標準API(application programming interface)を規定することにある。Google社以外にも,米MySpace.com社やYahoo!社などのSNS関連企業がOpenSocial構想に賛同している。

 まず,Yahoo!社,Senior Director of Product ManagementのCody Simms氏は,「これまでの常識では,インターネットでビジネスを行うためにはWebサイトを立ち上げる必要があった。しかし,これからは人気のSNS上にアプリケーションを配信できるので,Webサイトを持っていない企業でもインターネット・ビジネスで成功できる可能性がある」(同氏)との見解を述べた。こうした環境を実現するためにYahoo!社は,OpenSocialのAPIへの対応を含めた,同社のWebサイトの刷新計画「Yahoo! Open Strategy」(Tech-On!関連記事)を進めているという。

 Google社における,OpenSocialプロジェクトの推進者の1人であるSocial EvangelistのKevin Marks氏は,OpenSocialの導入によって,ユーザーによる自らのデータの制御性が高まると主張する。例えば,MySpaceは若者やマルチメディアが中心のSNSと認識されている。「各個人の人生は一つのSNSだけでは収まりきらないほど幅広い。OpenSocialの導入により,ユーザーが自分の人生のソーシャル・グラフのデータを適切なSNSに公開できるようになる」(同氏)とした。

 一方,米大手ケーブルテレビ事業者のComcast Corp.に買収されたPlaxo社(Tech-On!関連記事),Marketing,Vice PresidentのJohn McCrea氏は,OpenSocialに代表されるSNSをオープン化する動きを,Webブラウザが普及した1990年代と比較した。「1990年代にはAOLなどの独占的なオンライン情報のサイトは,Webブラウザの普及によりオープンなインターネット上で構築されたWebサイトに負けた。これまでSNSはかつてのAOLと同じように独占的な存在だった」(同氏)。OpenSocialの導入により,ユーザーの好みや新しく見つけた情報を身近なに人にいち早く伝えられるようになると述べ,「この15年間において,最も面白い時代がこれから始まると思う」(同氏)と将来に期待した。

 さらに,OpenSocialはパソコン上で操作するSNSに限っていないようだ。詳細は明らかにしなかったものの,Google社のMarks氏によると,OpenSocialの最新バージョン0.8では携帯端末などへの適用も想定しているという。