「BUGbase」を手にする米Bug Labs社のPeter Semmelhack氏
「BUGbase」を手にする米Bug Labs社のPeter Semmelhack氏
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Arduinoを利用したオープンソース・ハードウエアの例。植物が水を求めているかなどを「Twitter」を通じて公開するためのキット。
Arduinoを利用したオープンソース・ハードウエアの例。植物が水を求めているかなどを「Twitter」を通じて公開するためのキット。
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 米サンディエゴで開催されたO'Reilly Emerging Technology Conference(ETech)では,「オープンソース・ハードウエア」が一つのテーマとなった。

 同イベントを主催する米O'Reilly Media Inc.のFounder & CEOであるTim O'Reilly氏は,初日の基調講演(Tech-On!関連記事)で「オープンソース・ハードウエアの威力を痛感したのは,米Dash Navigation,Inc.のPND製品「Dash Express」にオープンソース・ハードウエアの携帯電話機「OpenMoko」が採用されたという事実を知ったときだ(Tech-On!関連記事)。既存の携帯電話機メーカーには協力を得られなかったと聞く。オープンソース化により,携帯電話機の技術を携帯電話機のフォーム・ファクタから解放し,ハッカーや起業家が新たなアイデアを結実できるようになった」と宣言した。 

 また三日目の基調講演には,米Bug Labs社President and CEOのPeter Semmelhack氏が登壇。同社は「BUG」と呼ぶ,モジュール構造で機能を変えられるオープンソース・ハードウエアの製品開発を手がけており,最近注目を集めている(同社のWebサイト)。その理由を同氏は,「ハードウエアを開発する場合,製造コストが厳しい。大量に製造しないとコストが安くならないからだ。このため,まだ開発者の頭の中にしか存在しない幻のハードウエアが数多く残っている」と説明した。BUGは現在開発中で,2008年3月17日に最初のモジュールを発売する予定だ。最初のモジュールは「BUGbase」と呼ぶ,ARM1136JF-Sマイクロプロセサを搭載したモジュール。Linuxが動作する。発売時の特別価格は299米ドル。BUGbaseに搭載するコネクタを介して,他のモジュールを接続できる。モジュールは自動的に認識する。BUGbaseに差し込めるモジュールはGPS機能を提供する「BUGlocate」(発売時特別価格79米ドル),イメージ・センサ「BUGcam2P」(同69米ドル),タッチ・センサ付き液晶ディスプレイ「BUGview」(同99米ドル),加速度センサ「BUGmotion」(39米ドル)などがある。これらモジュールの組み合わせを変えることによって,ユーザーは所望のハードウエアを簡単に作成できる。公開されたハードやソフトの情報を元に,独自の機能を追加することも可能だ。

 こうした仕組みを実現するため,BUGには「OSGi Framework」と呼ぶソフトウエアを導入した。これによりモジュールを差し込んだ時点で,BUGbase上で動作するWebサーバーはモジュールからの入力データを扱えるという。実際に講演では,BUGbaseにイメージセンサ・モジュールを差し込んで,撮影した静的イメージをWebで配信するデモを実演した。聴衆の中から「これはすごい」という声が上がった。

 以上のような比較的規模の大きなものばかりでなく,もう少し小粒なものもETechのセッションで紹介された。登壇したのは米Adafruit Industries社のLimor Fried氏と雑誌『MAKE』のSenior EditorであるPhillip Torrone氏。Adafruit Industries社は「Arduino」と呼ぶオープン・ハードウエアのマイクロコントローラ・ボードなどを販売している。まず「オープンソース・ハードウエア」と言っても,公開している情報に差があると指摘した。例えば,米Neuros Technology International, LLCは,同社のビデオ・レコーダ「Neuros OSD」はオープンソース・ハードウエアと主張しているが,「彼らが公開している配線図は,ライセンスが明らかにされていない。ユーザーの権利が分からない。さらに実際に利用するには,リバース・エンジニアリングしなければならない部分が多い」(Fried氏)。オープンソース・ハードウエアは比較的新しい概念であり,オープンソース・ソフトウエアほど定義や理解が確定していないという印象を残した。