当テーマサイト「機械・メカトロニクス」において2007年で最も高いアクセス数を獲得したのは,「【写真レポート】新規開発品の金型は内製,写真で見るキヤノン新型デジ一眼の主要部品」だった。
▼ 2007年「機械・メカトロニクス」記事ランキング
キヤノンが2007年8月20日に報道陣に公開したデジタル一眼レフカメラ「EOS-1Ds Mark III」と「EOS 40D」の2機種の各主要部品をすべて写真で掲載するとともに,その主な特徴について簡潔にまとめて紹介するスタイルが読者の注目を集めた。
同社は今,金型の重要性を見直して内製を強化する動きを見せている。これらのデジタル一眼レフカメラを造る上でも,内製の金型を使ったことを同社は報道陣にアピールした。これを製品の差異化のポイントとする考えだ。
第3位に選ばれたのが,「地下鉄乗り入れのロマンスカーが完成----金型は50000形から一部を流用【動画あり】」。2007年10月19日,小田急電鉄と東京地下鉄が地下鉄千代田線に乗り入れる特急ロマンスカーの運行計画を発表した。これに併せて小田急電鉄が報道陣に公開した新型車両「60000形」(愛称:MSE)を紹介した記事だ。
現行の「50000形」は連接台車だが,新型車両では,1両が20mのボギー車とした。編成は,6両編成が2本と4両編成が1本。ほとんどを10両で走行するが,6両編成でも運行する計画。動画を利用し,視覚的な情報を提供した点もPVの高さに貢献した。
「成熟商品」と呼ばれながらも,進化し続ける家電製品のニュースが人気を集めるのも,当サイトの特徴の一つ。2007年も松下電器産業の掃除機が第5位にランクインした。「松下電器産業,集塵性能を高めた新型掃除機を発表【動画あり】」がそれ。吸込仕事率590Wを実現し,吸込口のブラシ形状を工夫して集塵性能を高めた掃除機「MC-P7000JX」を紹介した。この掃除機は,吸込仕事率を高めるために,モータの効率を0.3%向上させたり,ホース径を大きくして空気の流量を増やしたりといった改良を施した。
心臓部であるモータにおいて,整流子と巻線,ファンに改良を加えた。例えば,整流子は,直径を22mmから20mmに小さくしてカーボン・ブラシとの接触面積を減らし,接触による損失を低減している。巻線では,従来直径0.47mmだったCu(銅)巻線を直径0.5mmのものに換えた上,従来は損失になっていた巻締め部分を不要にする巻き方を開発した。ファンは,吸い込んだ後の空気の流路の面積が均等に広がるように形状を見直した。
最近,トヨタ自動車がバイオリンを演奏する人間形ロボットを開発したり,ホンダがさらに知能を進化させた人間形ロボット「ASIMO」を発表したりするなど,再びロボットに注目が集まっている。こうした中,6位に「56個のモータを駆使して,走行と歩行を切り替えながら移動するロボットを開発【動画あり】」が選ばれた。千葉工業大学未来ロボット技術研究センター(fuRo)とリーディング・エッジ・デザイン(L.E.D,本社東京都八王子市)が共同で開発したロボット「Halluc II」。先端に車輪を取り付けた8本の脚を使って移動する。各脚には7個のモータを搭載し,車輪の回転による走行モードだけでなく脚を動かすことによって移動する歩行モードも実現する。
ロボットの動きを文章で伝えることは難しい。百聞は一見にしかず。「インセクトモード」や「アニマルモード」「レベリング」など,さまざまな走行(歩行)状態のデモを動画で紹介した点が読者に好評だった。
当テーマサイトでは,扱うニュースの幅が広いという特徴もある。デジタルカメラ,電車,掃除機,ロボット…。これをさらに裏付けるかのように,第7位にはレンズの製造技術に関する記事「産総研,反射防止機能付きレンズを安価に大量生産できる技術を開発---金属ナノ粒子で金型に微細構造を形成」がランクインした。産業技術総合研究所(産総研)が伊藤光学工業と共同開発した技術だ。金属ナノ粒子を使って金型表面に微細な凹凸を形成し,この金型で射出成形した樹脂レンズに反射防止機能を与える。これまで必要としていた多層膜のコーティング工程をなくしてコストを削減する。
真空中で形成したナノ粒子をマスクに使い,エッチングによって表面にナノ構造を付けた金型を作製する。コンパクト・デジタル・カメラや携帯電話機用カメラモジュールのレンズの製造にも応用できるという。
現在,好景気にわく航空機分野の記事もランクインした。第8位の「三菱電機,航空機用エンジンに採用の表面処理技術を出展」だ。放電表面処理装置「MSCoating」がIHI製の航空機用エンジン「CF34」に採用されたことを伝える記事だ。
パルス放電を使い,電極の成分を母材表面に盛って皮膜を形成する。電極には,コバルト系やニッケル系,モリブデン系などのコーティング成分を含んでおり,これらを用途によって使い分ける。コバルト系のコーティングをする場合,1秒間当たり1μmの皮膜を形成できる。
従来は,耐摩耗性を高めるために溶接やめっきを使っていたが,剥離(はくり)したり,母材が熱でゆがんだりすることがあった。これに対し,新しい技術では変形が少なく,溶射やめっきで必要なマスキングが要らないなどのメリットがあるという。
2008年になっても,広い視野で重要な技術や話題を探して当サイトで伝えていく所存だ。