クアルコムジャパン 取締役会長の松本徹三氏。5月31日付けで会長を辞任するという。
クアルコムジャパン 取締役会長の松本徹三氏。5月31日付けで会長を辞任するという。
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図2 現状と今後の周波数割り当て計画の状況
図2 現状と今後の周波数割り当て計画の状況
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図3 「ワンセグは無料放送,MediaFLOは有料の蓄積型放送が中心になる」
図3 「ワンセグは無料放送,MediaFLOは有料の蓄積型放送が中心になる」
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 米QUALCOMM Inc.が今回発表した3規格対応受信LSIは,MediaFLO対応としては「第2世代」になる(速報記事)。第1世代は,MediaFLOだけに対応した受信チップ・セットで,RFレシーバ回路LSIとOFDM用LSIの2チップ構成だった。米国では大手通信事業者の米Verizon Communications Inc.が2006年末からMediaFLOのサービスを開始する予定。受信端末もこの第1世代のチップ・セットを用いて,韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.や韓国LG Electronics Co.,Ltd.,米Motorola,Inc.,京セラの米国法人などが開発を始めているという。

 今回の第2世代のチップは,65nmのプロセス・ルールを用いて,RFレシーバ回路とOFDMの処理回路を1チップ上に集積する。放送塔ごとに周波数を変える「MFN(multiband frequency network)」という方式に今回初めて対応し,周波数も第1世代の698~746MHzの48MHz分から,今回は470~862MHzの92MHz分と大幅に拡大した。「日本や欧州で空いている周波数をすぐにでも使えるようにするため」(クアルコムジャパン 取締役会長の松本徹三氏)というのが理由である(図1)。

「各地域の空き周波数を使わせて欲しい」

 松本氏は記者発表の場で新たな提案を行った。「現在,日本のUHF帯には,使われていないチャンネルが各地域ごとにある。それを2008~2011年の間,借用という形でMediaFLOサービスに利用できるようにしてほしい。2011年にはいったんすべて返還する。そうすれば周波数の有効利用にもなるし,誰も困らない」と主張した。

 本来,MediaFLOサービスを日本で提供できる可能性は,地上アナログ放送が停波する2011年以降にしかない(図2)。現在は710MHz~722MHzの12MHz分の2011年以降の割り当て先が決まっておらず,2006年7月に総務省が何を割り当てるかの結論を出すことになっている。

 一方,QUALCOMM社の今回の提案は,アナログ放送の停波後まで待たなくても,現時点で空いているチャンネルを利用してサービスを始めたい,という立場を表明したものである。「今回のチップの発表も,このアイデアに沿って大幅に前倒しした。総務省がMediaFLOに周波数を割り当ててくれるのであれば,2007年夏にも今回のチップの量産を開始する。2008年初頭には受信機の準備も整い,サービスを開始できる」(松本氏)。

「ワンセグとは共存共栄」

 松本氏は,MediaFLOはワンセグと対立するのでは,という質問に対して「ワンセグは一般のテレビ放送向けに必要不可欠なもの。それに対して,MediaFLOは,数十チャンネルの多チャンネル放送や端末への蓄積型放送に向いており,ややマイナーなスポーツやニュースの配信に最適。通信事業者や端末メーカーにとっても,ワンセグとの1チップ化が実現することで,MediaFLOを入れない理由がないのでは…」(同氏)とし,ワンセグとMediaFLOの共存共栄を訴えた(図3)。