街角で飲むチャイは1杯で5ルピー(約12円)
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ショーケースに見入る
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はんだゴテで修理中
はんだゴテで修理中
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出番を待つモジュールたち
出番を待つモジュールたち
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 インドでは,大学を卒業したばかりの社会人の初任給が日本円にして2万円程度といいます。ざっくりいって日本の1/10程度です。一方で,携帯電話機の普及機種を買おうと思ったら,新品で2500ルピー(約6000円)から5000ルピー(約1万2000円)しますから,一般市民にはまだ高嶺の花といえます。日本の感覚で,6万円から12万円することになります。このため昨日の報告でもお伝えしたように,中古の機種を求める人がいるわけです。

 そんな中古市場の様子を知るために,デリー市街にあるGhaffar Marketに行ってきました。中古の携帯電話機を手に入れたい人が集まる場所と聞いたからです。メインの通りから1本路地に入ると,なるほど納得。100mほどの通りに20件ほどの中古携帯電話機の店が軒を連ねていました。よほど魅力的な品揃えなのか,どの店にも人だかりができています。値段を聞いてみると,Nokia社の旧機種で最も安いものが1400ルピー(約3500円)とのこと。交渉すればもっと下がりそうです。

 通りの突き当たりには「Mobile Repairing」という看板を掲げた店がありました。つまりは修理屋さんです。カウンターの奥では,エンジニアらしき若者が携帯電話機のプリント基板と格闘中。先端の太さが5mmはありそうなはんだゴテを操りながら,器用に不具合箇所を直していました。一般市民にとっては高価な機器だけに,壊れてもまずは直そうと考える人が多いのでしょう。

 そんなことを思いながら修理の様子をしばらく見ていると,液晶ディスプレイが割れた携帯電話機を手にしたお客がやってきました。けっこう使い込んである古い機種だったのですが,ディスプレイを直したいようです。依頼を受けた店主は手馴れた手つきであっという間に分解し,液晶パネルが組み込まれたモジュールを取り出します。そしてお客を待たせたまま,狭い路地の奥に入っていきます。興味をそそられついて行くと,店主は路地の先にある雑居ビルの中に消えました。続いてそのビルに入ってみるとびっくり。携帯電話機の部品を扱う店がずらりと並んでいたのです。液晶パネルはもちろんのこと,キーボードやマイク,スピーカーに至るまでありとあらゆる部品が手に入りそうでした。修理店の店主は,ここでお客の携帯電話機に合うモジュールを買っていたのです。部品の多くは新品でしたが,中にはいかにも中古携帯電話機から外したとおぼしきものもありました。

 第三者による携帯電話機の修理は,メーカー保証という点からは論外でしょう。しかし,ようやく手に入れた携帯電話機を長く使いたいという需要をさっそくビジネスに結びつける業者に,インド経済の強かさを感じました。同時に,新機種が出るたびに携帯電話機を買い換えることが珍しくない国からやってきた人間として考えさせられました。