坂本氏。「パソコンやサーバ機に向けたDDR2対応チップセットの出荷が滞ったのが誤算。100nmルールで作る製品がなくなり,携帯電話機やデジタル家電向け品種を急遽振り向けた」
坂本氏。「パソコンやサーバ機に向けたDDR2対応チップセットの出荷が滞ったのが誤算。100nmルールで作る製品がなくなり,携帯電話機やデジタル家電向け品種を急遽振り向けた」
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製造ルールの微細化により,ビット換算による出荷数量を引き上げる計画だ
製造ルールの微細化により,ビット換算による出荷数量を引き上げる計画だ
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 エルピーダメモリは,2004年度(2004年4月~2005年3月)の連結決算を発表した(発表資料)。売上高は2070億円(対前年度比106%増),営業利益は151億円,純利益は82億円。営業利益,純利益共に前年度の赤字から黒字へ転換した。ただし同社は,2005年1月と4月の2度にわたり,2004年度業績の下方修正を発表している(Tech-On! 関連記事1同 関連記事2)。併せて発表した2005年度の連結業績予想では,売上高が2600億円(対前年度比26%増),営業利益が186億円(同23%増),純利益が140億円(同71%増)とした。

90nm前倒しで原価5割~7割減目指す

 四半期ごとの業績でみると,第2四半期に9.6%,第3四半期に10%だった営業利益率が,第4四半期は2.2%へ急減している。これについてエルピーダメモリは,DRAMの単価下落や在庫増に伴う評価損などに加え,90nmルールによるDRAMの量産に向けた設備投資の前倒しを実施したためと説明している。

 同社は2005年4月に,子会社の広島エルピーダメモリが保有する300mmウエハー対応第1工場(E-300 Fab1)において,90nmルールによるDRAMの量産を始めた。早期に月産1万5000ウエハー体制を目指すとしている(同 関連記事3)。「今後の事業計画を策定する前提として,下落したDRAMの価格は戻らないと考えている。その中でどう利益を出すかといったら,コスト削減しかない。そのためには,90nmルールの製品をちゃんと出すことが必要だ。品質では競合他社に負けていないので,今後はコスト削減に注力していきたい」(同社 代表取締役社長 兼 CEOの坂本幸雄氏)。

 2004年度第4四半期の段階では,製造ラインに投入するウエハーに占める110nmルール品の構成比が85%,100nmルール品が15%。これを2005年第3四半期には,全体の55%を100nmルールに移行し,新規に立ち上げる90nmルールの採用比率も15%とする。ユーザー企業からの引き合い次第では,90nmルールによる量産を2005年中に50%近い比率まで引き上げる可能性もあるとしている。こうした微細化をはじめとする取り組みにより,2005年度第4四半期時点でのDRAMの製造コストを,サーバ機などに向けた品種で対前年同期比50%減,携帯向けで同60%減,デジタル・テレビ向けで同70%減とする意向だ。

 現在建設中の広島エルピーダの300mmウエハー対応第2工場(E-300 Fab2)は,2005年12月の量産開始を予定している。当初は月産3000ウエハー体制,その後2005年度第4四半期をメドに月産1万5000ウエハーを目指す。

「DRAM単価,足元で上昇始めている」

 ここ数カ月のDRAM市況については,第4四半期の前半に下落がみられたが,2月下旬から3月にかけて下げ止まったという。「一部のメーカーが,競争の厳しくなったフラッシュEEPROMからDRAMへ製造品目を切り替える動きがあった。またユーザー企業に対し,採算を度外視した低価格を提示するメーカーもあった。こうした動きを受けて,市場価格が下振れしている。当社は極端に安い価格に対しては追随しないというスタンスを明確にしており,結果として第4四半期に在庫量が増えた」(坂本氏)。

 2005年度の第1四半期については引き続き下げ圧力はあるものの,メーカー各社の値下げ余力は限界に来ており,これ以上の大幅な下落はないと坂本氏は予測する。「4月末~5月分の受注単価は少し上がってきている。第3四半期ころになると,価格がかなり回復する可能性もある。いずれにせよ,現状の値下げ圧力は一時的なものだろう」(坂本氏)としている。

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