青色発光ダイオード(LED)に白色LED,青紫色半導体レーザ——。これらにはすべて,GaN(窒化ガリウム)系半導体が使われている。こうしたGaN系半導体を使う素子は,実用化されるごとに機器に大きな変革をもたらしてきた。

 例えば,青色LEDによって街角にある大型ディスプレイの色表現が多彩になった。現在は,液晶テレビなどの色再現範囲を広げるキー・デバイスとして注目を集める。白色LEDは,携帯電話機に搭載するカラー液晶パネルのバックライト光源に必要な部品だ。最近は設計自由度を高めるカギを握るとして,照明機器や自動車のヘッドランプへと応用範囲を広げようとしている。青紫色半導体レーザは記録装置の大容量化をもたらした。覇を競うBlu-ray Disc対応機やHD DVD対応機のレーザ光源に必須な部品である。

 そして今,GaN系半導体を使う新たな素子が登場しようとしている。今度はこれまでのLEDやレーザといった「光モノ」ではなく,トランジスタに適用するのだ。これによって携帯電話基地局のパワー・アンプ回路,産業機器や白物家電,自動車の電源回路やモータ駆動回路などで新たな変革が起こりそうだ。既存の素子に比べて低い電力損失と1ケタ高い出力を得られる特徴を生かし,回路の低消費電力化や小型化を狙っている。