バイオ3Dプリンターで血管を作る研究を行う佐賀大学大学院 工学系研究科先端融合医工学 教授の中山功一氏。同氏は2015年2月8日に神戸市で開催された「第5回神戸医療イノベーションフォーラム」で、細胞と3次元データを用いて生きた構造体を作るシステムの開発について講演した(第5回神戸医療イノベーションフォーラムの関連記事1関連記事2)。

中山氏
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 中山氏は、この研究開発の最終目標について次のように位置付ける。「臓器移植に取って代わる自分の細胞とさまざまな材料との組み合わせで、より安全で効果的な新しい臓器を作る」。

 この技術の基本的な原理は、細胞同士がお互いに自然にくっつく現象を利用して、細胞を集めた2~3mmの“細胞の団子”を作り、積み木のように積み上げていくことで構造体を作ること。ただし、生きた細胞は乾燥に弱く、ひからびて死滅するため、培養液などの中でこの操作を行うが、わずかな振動で構造体にならずに崩れてしまう。

 そこで思いついたのが、「細胞の団子を串刺しにして積み上げ、くっついた後に串を抜けば最終的に構造体が完成する」(中山氏)という方法だ。骨折したときに骨をピンで串刺しにして固定し、治ったら抜く方法があるが、「その骨折治療法から着想した」(同氏)という。