2007年7月に日本ビクターとケンウッドが経営統合を決めるなど,業界再編の動きが本格化した。

 「つまり,緩やかに衰退するのを待っているんですよ」

 取材先の発言が,記事の方向に大きく影響することがある。この一言もそうだった。なぜ日本企業は,現在の窮地から鮮やかに復活する,大胆な戦略を実行できないのか--我々の疑問に対して,元大手電機メーカーの経営幹部が出した答えがこれだった。

「垂直」「総合」では限界に

 日経エレクトロニクスは,2007年4月9日号で誌面増強を図った。日本メーカーや技術者を取り巻く環境の変化を受けて,より充実した誌面作りを志向した。この号にふさわしい特集記事として選んだのが,国内電機メーカーの事業再編の話題だった。

 「三洋電機が中・小型液晶パネルから撤退」,「ソニーが最先端の半導体製造から手を引く」,「日立製作所が上場子会社を初めて売却」…。2006年から2007年にかけて,大手電機メーカーを中心に,事業の再編が相次いだ。

 中でも世間の関心を集めた大型案件が,松下電器産業による日本ビクター売却である。特集の取材もたけなわの2007年3月16日,松下は米投資ファンドのTPGに優先交渉権を与える方向で最終調整に入ったと,日本経済新聞が報道。この売却が実現すれば,投資ファンドはビクターの事業の切り売りや,人員の削減にまで踏み込む可能性があった。

 日本ビクターは年間の売上高こそ小粒だが,民生機器から産業機器まで手掛け,部品やコンテンツの事業もグループ内に抱える,日本的な総合企業である。そこに外資のメスが入るということは,日本がこれまで培ってきた垂直統合や総合電機という体制の限界を象徴する出来事と,我々の目には映った。

勝利の方程式を描く

 今後,世界市場で生き残っていくには,日本メーカーは生まれ変わらなければならない。垂直・総合の体制を見直し,世界で戦える事業を中心に再編を図るべきだ。これが,このときの特集で前面に押し出したメッセージだった。記事に付けたタイトルは「電機 勝利の方程式」1)。それぞれのメーカーが持つ固有の強さを最大限発揮する体制を作り上げてほしいとの願いを込めた。