アイデアが製品に

 Apple社は1977年に「AppleII」(ユーザー・インタフェースは文字ベース)を発売し,成功を収めていた。同社の創業者の一人であるSteve Jobs氏は1979年にXerox社のPARCを訪れ,Altoに触れ,GUIの可能性を理解したといわれている。

 好調だったAppleIIは,米IBM社がパソコン分野に参入し,1981年に「IBM PC」を発売すると,次第にシェアを落としていく。Apple社はこれに対抗するために,1983年に「Lisa」というGUI搭載パソコンを発売したが,1万米ドル弱という価格のために広がらなかった。

 そして1984年1月22日,米国最大のスポーツ・イベントである「スーパーボウル」のテレビ放映中に,Macintoshの登場を予告するCM「1984」を1度だけ流す。その後の1月24日,カリフォルニア州クパティーノのDe Anza CollegeでMacintoshを発表する――。

 こうしてMacintoshは華々しく市場に登場した。日本での価格は約60万円と高価だったが,GUIを搭載したパソコンという新しいジャンルをつくり出すことに成功した。

すべてのパソコンに

 GUIに関して遅れを取っていた米Microsoft社は,Macintoshの発売から1年遅れで「Windows 1.0」を発売した。当初のWindowsは,拡張機能として「MS-DOS」に付加されたもので,複数のウインドウをオーバーラップして開くことはできず,タイルを並べたようにウインドウを並べるタイプだった。Microsoft社はその後,Windwos 2.0,Windows 3.0,Windows 3.1と改良を続けていった。

 Windowsがその地位を確立したのは,1995年に発売した「Windows 95」からであろう。このとき,既にGUIが標準となっていたMacintoshやUNIXワークステーションに加え,IBM PCおよびその互換機もGUI搭載のパソコンとなり,現在に至る。

 GUIを改良する動きは現在も続いている。パソコンのハードウエア性能が向上したために,ウインドウを3次元的に表示したり,半透明なウインドウを重ね合わせるといったことが簡単にできるようになった。しかし,GUIの基本的なアイデアは1970年代から進歩してはいない。

稲葉 則夫