(本稿は,2009年10月10日開催の第1回Tech-On!Campusミーティング「だから,エンジニアは面白い」での大倉氏の講演を基に構成したものです)

第1回Tech-On!Campusミーティングで講演する大倉務氏
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 最後に,Google社で働く魅力について紹介します。

 何よりも言えることは,会社全体として,社員みんなが,「世界を変える」ということを結構本気で考えていることです。

 「ユーザーのために何ができるのか」を本気で考えている点も魅力です。会社というのは,やはり,「お金を稼がないといけない」という面がありますが,Google社では「ユーザーのために何ができるのか」を最優先に考えています。私は入社して1年半ぐらいになります。その間にいくつもの新しい機能や新しい製品のアイデアを社内で出してきましたが,その中で,「それは本当にユーザーの役に立つの?」「もっと役に立つ方法があるのではないか?」という指摘をされたことは,数知れずあります。しかし,この1年半の間に一度たりとも「これは儲かるの?」と聞かれたことはありません。

 それから,新しいことに挑戦できる雰囲気に満ちています。社内全体として「新しいことに挑戦することは良いことだ」という共通認識があります。「動いているのだからそのままでいいじゃないか」という発想よりも,「もっと良くする方法はないのか」という考え方が推奨されています。ほとんどの社員も同じ気持ちで仕事に取り組んでいるので,「新しいものを作ろう」という方向で話が進みやすい。

 次は,私自身が一番気に入っているのですが,ユーザーがたくさんいます。私が何か新しい機能を開発した時に,何千万,何億という人が,何十億回,何百億回と,私の作った機能を使ってくれます。例えば,私が作った機能で世界中の誰かの時間を1秒短縮できたと仮定すると,たとえ1回の処理で1秒の短縮でも,それが何千万回,何億回,何十億回と使われると,非常にたくさんの時間を世界中で節約することにつながります。このように,たくさんのユーザーがいると,自分が何かを開発した時に,非常に大きな影響を与えることができます。

世界中の人と協力しながら,世界を舞台に仕事ができる

 Google社の社内では,世界を変えるような大きな仕事をするための環境が整っています。この連載の第1回で,インターネットの検索をするためには非常にたくさんのコンピュータが必要になると言いましたが,Google社には世界最大といわれているコンピュータ資産があります。さらに,それを活用するためのインフラ,フレームワークなども整っています。また,余計なことをあまり考えずに済む職場環境もあります。例えば,ペーパー・ワークのような仕事は,できるだけしなくて済むような環境が整っています。

 同僚達は皆,すごく親切で協力的です。同僚は世界中にいます。言語も文化も違う世界中の人と協力して,時差の壁を越えて一緒に働いていくためには,親切で常に協力的な心を持つことが欠かせません。

 世界中のGoogle社を見渡すと,“すごい人”というのは本当にたくさんいます。例えば,私が入社した直後に,誤差の少ない統計の取り方のアイデアを2日間必死で練ったことがあるのですが,それの偏りをたった30秒で見抜かれてしまったこともありました。また,週に1回と3カ月に1回,自分の成果をまとめる機会があるのですが,「多分これは3カ月の成果だろう」と思っていたレポートが実は週報だったということもありました。学会の論文を読んでいて,「この論文は面白い」と思ったら著者が社内の人だったり,コンピュータの歴史を調べていたら「この前メールで名前を見た社内の人だ」ということがあったりもしました。このように,すごい人と一緒に仕事できるのも「Google社で働く魅力」と言えると思っています。