(PIXTA)
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 2020年4月以降も全エリアで電気の規制料金(経過措置料金)が存続する見通しとなった。この4月中にも電力・ガス取引監視等委員会が経済産業大臣の意見具申に対して回答する。

 2016年4月に自由化された低圧分野は「規制なき独占」を防ぐ観点から2020年3月まで規制料金を存続させ、それ以降は解除か存続かを競争状況などを踏まえてエリアごとに決めることになっていた。

 監視委員会は全エリアで引き続き規制料金で低圧需要家を保護する必要があるとの判断を固めたわけだ。大手電力と競ってきた新電力の中には「2020年の規制料金解除は半ば既定路線と思っていたので驚いた」(新電力幹部)といった反応も見受けられる。

 監視委員会は2018年9月から有識者会議で議論を続けてきた。この中で、規制解除の条件として掲げたのが「消費者の状況」「十分な競争圧力の存在」「競争の持続的確保」の3要件だった。

育っていない有力競争者

 実はこれら3要件は、2017年10月から2018年8月まで非公開で開催された「競争的な電力・ガス市場研究会」において、競争政策の専門家による「理論的研究」の成果として整理されたものだ。

 今回、規制料金が撤廃に至らなかったのは、3要件の中で「十分な競争圧力の存在」が認められなかったことが大きい。

 具体的には「(低圧分野の)エリアシェアが5%程度以上の有力で独立した競争事業者が2社以上存在する」かどうかを基準とした。独禁法上はシェア10%程度が有力な競争事業者の目安とされるが、小売電気事業の場合、特定の鉄道沿線や都市ガス供給エリアなど独自の顧客基盤で競争力を発揮する事業者も少なくない。エリア全体ではシェア10%を下回っても強い価格牽制力が認められるケースがあり得ることなどから、基準としては「5%」を目安にした経緯がある。

 ある意味、基準は緩めに見たとも受け取れる。だが、それでもシェアが「5%程度以上」の新電力が「2社以上」存在するエリアはなかった。

 低圧分野で新電力のシェア(件数)が10%を超える東京電力グループと関西電力エリアにおいて、2位の東京ガス(4.61%)と大阪ガス(5.54%)は基準を満たすと見なされた。だが、東京エリア3位のKDDI(2.14%)と関西エリア3位のジェイコムウエスト(1.11%)は基準に遠く及ばなかった(シェアは2018年9月時点)。「2社目がなかったことが規制料金を残す判断につながった」(監視委員会幹部)。

 ちなみに「2社以上」としたのは、競合が1社だけだと価格競争を回避する「協調行動」が生じるリスクが相対的に高くなると見なしたためだ。

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