電力自由化がもたらす最大の恩恵は、「賢い需要家」を生み出すことかもしれない。

 ドラッグストアチェーン大手のココカラファインは、2018年11月に電力の購入体制を刷新した。全国約800店舗1200契約分の電力調達や支払管理などを、電力購入支援サービスを手がける日本省電(東京都港区)に包括委託したのだ。

ココカラファイン目黒大橋店
ココカラファイン目黒大橋店

 多数の店舗を抱え出店や閉店を繰り返す流通企業にとって、電力購入は悩ましい業務だ。電気料金は販管費の中で大きな割合を占めているだけに、手を打たなければと考える企業は多い。だが、電力契約は専門的でとにかく分かりにくい。

 「特別な値引きですよ」と言われても、本当に安いのかを判断することすら容易ではない。大手電力の標準メニューすら、エリアによって金額や条件が異なる。新電力も選択肢に加えると、料金比較の難易度はさらに高まる。契約管理や支払いの業務負荷も非常に大きい。

 全国各地に店舗を構えるココカラファインも、電力購入の煩雑さに課題を感じていた1社だ。ココカラファインは全国に約1300の直営店舗を抱える。そのうち約500店舗は、入居先のビルオーナーなどが電力の契約主体となっている。それ以外の約800店舗は、ココカラファイン本社が一括して小売電気事業者との契約や支払いを行う形を目指している。

 だが、M&A(合併・買収)によって規模を拡大していることもあり、一部には店舗が直接、契約や支払いを行ってるところがある。また、店舗の電気工事を請け負う工事店が電力契約の代行を請け負い、本部が指定する電力会社とは違う事業者と契約していたケースなどもあった。

 料金メニューも同様だ。低圧の店舗も相当数存在するため、電力全面自由化前は大手電力が提供する標準メニューを推奨していた。だが、個別の割引メニューを利用している店舗もある。大部分は本社側でコントロールするものの、完全なる一元管理とは言えない状況にあった。

自力の競争入札で億単位のコスト削減

 ココカラファインには電力全面自由化後、自社で競争入札を実施し、電気料金の引き下げにトライしてきた経緯もある。

 全国1200契約分の電力供給を対象に、初回の入札を実施したのは2016年秋。大手電力や新電力など約20社が参加し、年間数億円の電気料金の削減を引き出した。単年度契約だったため、1年後に2度目の入札を実施すると、さらに年数億円の削減となった。

 ココカラファイン経営戦略本部財務部財務・購買チームの真鍋成・統括課長は、「2度の入札で2年間にわたり大幅なコスト削減を引き出したものの、3年目も入札をするのか迷っていた」と振り返る。理由は2つあった。

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