電力需給がひっ迫している。経済産業省は3月21日、東京電力管内を対象に初めて「需給ひっ迫警報」を発出。その後、東北電力管内にも警報を出した。同22日は朝から綱渡りの状況が続いており、夕方以降の停電の可能性も言及されている。なぜ、これほど深刻な需給ひっ迫が起きているのか。

(出所:123RF)
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 「電力需給が極めて厳しくなっています。このままの状況が続くと、本日の夜20時以降に揚水式水力発電の運転が停止し、約500万kW(200万~300万軒規模)の停電が発生するおそれがあります。」

 これは東京電力パワーグリッド(PG)による3月22日15時6分のツイートだ。同日は需要が立ち上がる朝から、電力の供給力にまったく余裕がなく、電力需要と同量しかない状況が続いている。揚水発電についての記載は、需給調整の最後の調整弁であることを示している。

 東電PGの「でんき予報」は、午後2時台には供給力に対する需要の割合が107%を付けた。100%を超えているということは、数字上は電力需要に供給が追い付いていないことを意味しており、ギリギリの状況にあることが分かる。

3月22日は電力需給がひっ迫。14時台は107%を付けた
3月22日は電力需給がひっ迫。14時台は107%を付けた
(出所:東京電力パワーグリッド「でんき予報」)

 主要因は2つある。まず、3月16日に発生した福島県沖を震源とする震度6強の地震によって、JERA広野火力発電所6号機や相馬共同火力発電の新地発電所の設備が損壊し停止。電力の供給力が減少してしまった。そこに、季節外れの気温低下が関東を襲い、電力需要が増加した。気温が1度低下すると、電力需要は100万kW増加すると言われる。

 既に、東電PGは3月18日から他エリアからの電力融通を受けてきた(「需給状況改善のための指示の実施について<東京電力パワーグリッド>(3月18日 15時28分実施)」)。

 だが、それだけでは電力需要を賄いきれない状況にあることから、経済産業省は3月21日、「需給ひっ迫警報」を発出し、家庭や企業へ節電を要請した。経産省は、電力需要を10%程度落とさなければ、電力供給が追い付かなくなり、停電の可能性があると説明した。

計画停電の実施は配電用変電所単位で手動

 萩生田光一・経済産業大臣は22日午後に緊急の会見を開き、「このままの状況が続けばブラックアウトを避けるために広範囲の停電を行わざるを得ない」と発言。200万~300万kWの節電が必要だが、会見時点では150万kW程度にとどまっているという。

 需給ひっ迫警報は、複数エリアで予備率が3%を切った時に発出するルールだ。節電要請を行っても節電目標に達成しない場合、計画停電の実施に踏み切る。冒頭で紹介した通り、東電PGは、このままいくと200万~300万世帯での停電可能性に言及している。

 関電工の出身で電力系統に詳しいI.T.I(宇都宮市)の柏崎和久社長は、計画停電の実施手法を次のように説明する。

 「需要に供給が追い付かなくなった段階で、変電所単位で電力供給を止め、停電を実施するのが現実解。東電PGなど一般送配電事業者は配電用変電所単位で需要を見ている。公平性の観点から、病院や公共施設などがつながる配電系統へは電力供給を優先し、止められるところから順次、止めて停電させていくのではないだろうか」

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